名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

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種まきし わがなでしこの 花ざかり いく朝露の
をきてみつらん      
                       藤原顕季

(たねまきし わがなでしこの はなざかり いくあさ
 つゆの おきてみつらん)

意味・・私が種をまいた撫子の花は今花盛りだ。
    朝露の置いた花をもう幾朝起きては見
    た事だろう。

    藤原長実(ながさね)大臣の家の歌合で
    詠んだ歌です。顕季(あけきえ)は長実
    の父親。わが子の「花盛り」を讃えて
    いる。

 注・・わがなでしこ=「我が撫でし児」を掛
     ける。
    をきて=「置き」に「起き」を掛ける。
 
作者・・藤原顕季=ふじわらあきすえ。1055~
    1123。詞花和歌集の撰者顕輔の父。諸
    国の守を歴任。
 
出典・・詞花和歌集・72。 


露の身の 消えもはてなば 夏草の 母いかにして
あらんとすらみ                         
                  詠み人知らず

(つゆのみの きえもはてなば なつくさの はは
 いかにして あらんとすらん)

意味・・露のようにはかないわが身が命耐えて
    しまったならば、母はどのようにして
    生きて行くことだろうか。

    母に先立ち死にそうな娘の心を詠んだ
    歌です。
 
 注・・露の身=露のようにはかない身。
    夏草の=葉を導く枕詞。ここでは同音の
    「はは」を導いている。
    あらん=生きている、健在である。

 出典・・金葉和歌集・619。 

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ふかき夜の むら雨かかる 朝じめり まだ咲ききえぬ
花の色かな             
                  正徹
                
(ふかきよの むらさめかかる あさじめり まださき
 きえぬ はなのいろかな)

意味・・深夜に降ったにわか雨で、朝方湿りながら
    まだ咲いたまま朝露も消えていない、清々
    しい花の色だなあ。

    昨夜の雨に濡れてまだ玉の露が残り、花が
    一段と艶(あで)やかに見えて、朝の清々しさ
    を詠んでいます。

 注・・むら雨=にわか雨。

作者・・正徹=しょうてつ。1381~1459。字は清岩。
    室町中期の歌僧。

出典・・岩波書店「中世和歌集・室町篇」

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山里は ものの寂しき 事こそあれ 世の憂きよりは
住みよかりけり          
                                        詠み人知らず

(やまざとは もののわびしき ことこそあれ よのうき
 よりは すみよかりけり)

意味・・山里の住まいは寂しい事ではあるが、雑事の
    煩わしい俗世間よりは住みよいことだ。

    山里では人との交流が少なく寂しいが、社会
    の中に入って行くと、自分の思い通りになら
    ず憂いを感じる。寂しさと憂いの比較で寂し
    さの方が良いといっている。

 注・・山里=山中の人里。ここでは隠遁生活者。
    寂(わび)しき=心細い、寂(さび)しい。
    世の憂きより=煩わしい世の中にいるよりも。
    「憂き」はつらい事。

出典・・古今和歌集・944。 


今ぞ知る 民も願ひや 久方の 空にみづほの
国さかふなり     
                    招月正徹 

(いまぞしる たみもねがいや ひさかたの そらに
 みずほの くにさかふなり)

意味・・今こそ分かった、国民たちの願望も永久に
    満たされるように、日本の国の、いよいよ
    栄えていることが。

    国民の願望が叶えられるところに日本国の
    繁栄があることを詠んでいます。

    民が富むと年貢も増えて国も栄える。年貢
    を取りすぎたり、戦争が多いと民が貧しく
    なり国の繁栄にはならない。

 注・・久かた=「空」の枕詞。永久の願いの意を
     こめる。
    みづほの国=日本国の美称。「みつ」は空
     に「満つ」を掛ける。

作者・・招月正徹=しょうげつしょうてつ。1381~
    1459。招月は雅号。室町中期の歌僧。
 
出典・・正徹詠草(岩波書店「中世和歌集・室町編」) 

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