名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

タグ:俳句、川柳


浮世の月 見過ごしにけり 末二年
                   井原西鶴
                 
(うきよのつき みすごしにけり すえにねん)

前書・・辞世。人間50年の研(きわ)まり、それさへ我には
    あまりたるに、ましてや。

意味・・人生50年といわれているが、私はもう52年も生き
    てきたので、おしまいの2年間だけ浮世の月を余分
    に見過ぎたことになる。

    西鶴の辞世の句です。

 注・・浮世=楽しい世。
    見過ごし=月を余分に見過ごしたの意。つまり長生
     きし過ぎたの意。楽しい世であるからうっかり余
     分に生きたというもの。
    末二年=再晩年の二年間。

作者・・井原西鶴=いはらさいかく。1642~1693。
大阪の
    町人に生まれる。「好色一代男」の作者。一昼夜に
    23500句を吟じたという。

出典・・西鶴置土度(おきみやげ)(小学館「近世俳句俳文集」)    


薮入りや 何も言わずに 泣き笑い   
                   
(やぶいりや なにもいわずに なきわらい)

意味・・奉公人が主人から休みをもらって、喜び勇んで
    帰って来た。親と対面したものの、楽しい思い
    出より辛く苦しいことばかり。話せば親を悲し
    ませると思うと何も言えない。只泣き笑いする
    ばかりだ。

    一方、息子の帰りを首を長くして待っている両
    親、特に親父は朝からソワソワ、いえ、前の晩
    から、いやいやそのず~っと前からソワソワ。
    有り金を叩いて、ああしてあげたい、こうして
    あげたい、暖かい飯に、納豆を買ってやって、
    海苔を焼いて、卵を茹でて、汁粉を食わせてや
    りたい。刺身にシャモに、鰻の中串をご飯に混
    ぜて、天麩羅もいいがその場で食べないと旨く
    ないし、寿司にも連れて行きたい。ほうらい豆
    にカステラも買ってやりたい・・。
    そして三年ぶりに息子とのご対面は、「薮入り
    や何も言わずに泣き笑い」・・落語「薮入り」
    の一節です。

 注・・薮入り=商家で住み込んで働いている奉公人が
      年に二度、一月と七月の16日、一日だけ
      家に帰るのが許された。奉公始めは三年間
      は休みを貰えなかった。
     

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名が無きを 悔やみ炭焼く 翁かな
                     
(ナガナキヲ クヤミスミヤク オキナカナ)

回文です。 

意味・・やりたい事をする為にする努力は辛くない
    が、やりたくない事を我慢してやる努力は
    辛いものだと、言われている。
    学校を出ていないばかりに、希望する所に
    就職出来なかった。その結果、辛い事の多
    い会社勤めになり、そのあげく会社を辞め
    てしまった。そして田舎に戻って炭焼きの
    仕事をしているうちに老人になってしまっ
    た。若き日の志を夢見ていたものの、夢に
    終わりそうだ。悔しい事だ。
 

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さみだれの かくて暮行 月日かな  
                    蕪村

(さみだれの かくてくれゆく つきひかな)

意味・・今日もししとしと降る雨になすこともなく
    暮れて行き、そして無為にこうして月日が
    過ぎて行く。

    雨のために予定の行事が中止になり、かと
    いってそれに変わってすることも無く、そ
    の日をぶらぶらして過ごしたような状態を
    詠んでいます。

作者・・与謝蕪村=よさぶそん。1716~1783。
    文人画家(南宗画)。
 
出典・・おうふう社「蕪村全句集」。
     


いつの日か昔語りに五月闇
                 恵好灯

(いつのひか むかしかたりに さつきやみ)

意味・・梅雨時の闇のように、つらい日々を送っていたと
    しても、いつかは必ず、昔話になって語り合う事
    が出来ます。生き続けましょう。

    参考歌です。
   「ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと
    見し世ぞ 今は恋しき」    (意味は下記参照)

 注・・五月闇=五月雨(梅雨)の頃、陰鬱でどんよりと暗い
     昼や月の出ない闇夜。

作者・・恵好灯=詳細未詳。

参考歌です。

ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しとみし世ぞ
今は恋しき                  
                    藤原清輔
          
(ながらえば またこのごろや しのばれん うしとみし
 よぞ いまはこいしき)

意味・・この先、生きながらえるならば、つらいと感じている
    この頃もまた、懐かしく思い出されることだろうか。
    つらいと思って過ごした昔の日々も、今では恋しく
    思われることだから。

 注・・憂し=つらい、憂鬱。

作者・・藤原清輔=ふじわらのきよすけ。1104~1177。

出典・・新古今和歌集・1843、百人一首・84。

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