名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

タグ:俳句


下下も下下 下下の下国の 涼しさよ
                          一茶

(げげもげげ げげのげこくの すずしさよ)

前書・・奥信濃に湯浴みして。

意味・・今こうして自分は下々の下国にいるが、一人湯浴
    みをしていると、下国ながらも、何の煩わしさも
    なく、涼しく全く気持ちよいものだ。
 
 注・・下下=きわめて程度の低いこと、最下等、下の下。
    下国=つまらない国、故郷をさしていったもの。
     土地が痩せ、耕地も狭く、ろくな産物もでない
     国。

作者・・小林一茶=1763~1827。北信濃(長野県)の農民
    の子。3歳で生母に死別。継母と不和のため15歳
    で江戸に出て奉公生活に辛酸をなめた。
 
出典・・七番日記。

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夏河を 越すうれしさよ 手に草履  
                    蕪村

(なつかわを こすうれしさよ てにぞうり)

意味・・流れも浅い夏の川を、手に草履を持って
    はだしで渡っている。底砂の冷たい感触
    も快く、このような水遊びが出来ること
    に嬉しくなってくる。

    画業で丹後にいた38歳から41歳ごろに詠
    んだ句と言われています。
    お金を儲けた嬉しさ、競争に勝った時の嬉
    しさなど世俗的な嬉しさではなく、運動を
    した時の心地よさを感じた時の嬉しさ、冷
    たい水に入った生理的な快感を得た嬉しさ、
    小鳥の鳴き声を聞いた時の嬉しさなど離俗
    的な喜びを詠んでいます。

 作者・・蕪村=ぶそん。与謝蕪村。1716~1783。
    南宋画の大家。

 出典・・あうふう社「蕪村全句集」。 


やがて死ぬけしきは見えず蝉の声
                     芭蕉
 
(やがてしぬ けしきはみえず せみのこえ)
 
意味・・蝉はもうすぐ秋になればはかなく死ぬに決まって
    いるのに、今は少しもその様子がなくやかましい
    ばかりに鳴きたてていることだ。
 
    たとえ短い命でも「今、ここ」を精一杯生きる生
    の充実感を詠んでいます。
 
作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1695。
 
出典・・猿蓑。

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石切の 鑿冷したる 清水かな   
                  蕪村

(いしきりの のみひやしたる しみずかな)

意味・・日盛りの石切り場で、石切人夫が
    石を切り出していたが、夏の暑さ
    にのみも熱くなったので、かたわ
    らの清水にのみをつけて冷やして
    いる。いかにも涼しげそうだ。

    一仕事をすると、のみも熱くなる
    し汗もかく。一息入れるためのみ
    を冷やすのである。
 
作者・・蕪村=ぶそん。1716~1783。南宗
    画の大家。
 
出典・・あうふ社「蕪村全句集」。

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盗人にとり残されし窓の月
               良寛

(ぬすびとに とりのこされし まどのつき)

詞書・・五合庵へ賊の入りたるあとにて。

意味・・泥棒が庵に入って来た。しかし庵の中には
    目ぼしい物は一つもない。やむを得ず泥棒
    は、役にもたたない物を手にして帰った。
    泥棒を思いやって窓から外を眺めると、た
    だ盗り忘れられた月だけが、明るく輝いて
    いることだ。

    盗る物がなく泥棒が感じた悲しみを見ると、
    可哀そうな泥棒だ。役に立つ物は無いが、
    お月さんなら提灯代わりになるものを、盗
    り忘れている。

    良寛のおおらかさ、博愛の気持ちがにじみ
    出ています。

作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。越後の
     神官の子として生まれる。18歳で曹洞宗光
    照寺に入山

出典・・谷川敏朗著「良寛全句集」。



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