名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

タグ:俳句

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夕立の 雲もかからず 留守の空  
                  向井去来

(ゆうだちの くももかからず るすのそら)

補注・・京都に妻を残し、長崎の里に帰る時の句。

意味・・今は夏だ。いつ夕立が来るか分からない。
    夕立が来る時は、必ず青い空がにわかに
    曇って入道雲がモクモクトと湧き立って
    来る。しかし、今見る京都には雲一つ無
    い。空よ、どうかいつまでもこのままで
    いてほしい。留守の家族に激しい風や雨
    を降らせるようなことのないようにして
    ほしい。

    夕立は自然現象だけではない。女所帯に
    襲いかかるいろいろな悪漢や暴行などに
    襲われないように、去来はひたすら祈り
    続けた。

作者・・向井去来=むかいきょらい。1651~17
    04。芭蕉門下10哲の一人。野沢凡兆と
   「猿蓑」を編む。
 

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宇治の川瀬の 水車 何とうき世を めぐるろう

                 
(うじのかわせの みずぐるま なんとうきよを 
 めぐるろう)

意味・・宇治川の川瀬にかけた水車は、うき世をどんな
    ものだと思いを巡らして回っているのだろう。
 
    無心に回る水車に人生流転の感慨として詠んで
    います。浮き世から憂き世へ、そしてまた浮き
    世と巡る人生。辛くとも堪えていれば必ずまた
    元のように良くなる、と期待しています。
 
    閑吟集が出たのは1518年頃。その当時の京都の
    世相は、家の数が昔の十分の一になって、皆は
    自給自足のために畑仕事ばかりしていた。京都
    御所は麦畑の中にあった。荒れた京都の様子で
    す。(1467~1477の応仁の乱では京都が戦場に
    なりほぼ灰燼となった)
    
 注・・うき世=浮き世(この世)と憂き世(つらい事の絶
     えない世)を掛ける。
    めぐる=「回る」と「巡る」を掛ける。
    人生流転=人には人生最高だと思う幸せな時と、
     落ち目でどうしようもない時がある。
 
出典・・閑吟集。

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鶯に 夢さまされし 朝げかな  
                    良寛

(うぐいすに ゆめさまされし あさげかな)

意味・・短い春の夜は明けやすく、見続けていた夢も
    美しい鶯の声によって覚まされた。名残り惜
    しい夢ではあったが、鶯のさえずる夜明けは、
    まことに素晴らしいことだ。

    鶯の鳴き声、参考です。

 注・・朝げ=朝明け。夜明け。

作者・・良寛=1758~1831。新潟県
    出雲町に左門泰雄の長子として生ま
     れる。幼名は栄蔵。

出典・・谷川敏朗著「良寛全句集」。

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田を売りて いとど寝られぬ 蛙かな 
                     立花北枝

(たをうりて いとどねられぬ かわずかな)

意味・・春の蛙は田んぼなどで雄が雌を求めてやかましく
    鳴きたてる。夜になってあたりが静かになると、
    門田で鳴きたてる蛙の声が耳に入って寝付かれない
    ほどである。それでも自分の田である場合は文句も
    いえずがまんもしたが、他人に売り渡してしまうと
    その鳴き声がうるさくて眠れない。配分

    自分の失敗で痛い目に会うのは我慢が出来るが、人
    のせいで痛い目に会うのは我慢出来ないものである。

 注・・いとど=ますます、いよいよ。
    門田=家の前の田。

作者・・立花北枝=たちばなほくし。?~1718。刀研ぎ業。
    芭蕉に師事。
 
 出典・・小学館「近世俳句俳文集」

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絶対に 甘柿という 苗木買う  
                     瀧春一

(ぜったいに あまがきという なえぎかう)

意味・・お祭りなどに立つ植木市。
    「上の方を剪定して植えると、3年で柿がなるよ」
    「いやぁ、これは間違いなく甘柿だよ」
    知識を得ながら苗木を買う。 

    買って貰うために穴の掘り方や水のやり方まで手
    を取り足をとり教えてくれる植木市の風景です。

作者・・瀧春一=たきしゅんいち。1901~1996。高等小
    学卒。水原秋桜子に師事。

出典・・松林尚志著「滝春一鑑賞」。


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