名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

カテゴリ: 和歌・短歌・俳句

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われのみや あはれと思はむ きりぎりす 鳴く夕かげの
大和なでしこ        
                    素性法師
                
(われのみや あわれとおもわん きりぎりす なく
 ゆうかげの やまとなでしこ)

意味・・私ひとりだけがしみじみ可憐な花であると、
    めでるだけでいいのであろうか。こおろぎの
    鳴く夕日影の中でひっそりと咲く、この大和
    なでしこは。

    夕日影に照らされている河原撫子の可憐な美
    しさを、自分ひとりだけで眺めるのは、惜し
    い、出来れば好きな人と一緒に眺めたい。

 注・・われのみや=「や」は反語の意。
    あはれ=しみじみと心を打つさま。すてきだ。

    きりぎりす=今のこおろぎ。
    夕かげ=夕日。
    大和なでしこ=河原撫子。秋の七草のひとつ。


作者・・素性法師=そせいほうし。~909頃。遍照
    僧正の子。

出典・・古今和歌集・244。170906

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いにしへの 七の賢しき 人たちも 欲りせしものは
酒にしあるらし   
                 大伴旅人

(いにしえの ななのさかしき ひとたちも ほりせし
 ものは さけにしあるらし)
 
意味・・その昔、竹林の七賢人が欲しがったのも
    まさしくこの酒であったらしい。

    月花鳥と静かに風流を楽しむ人達も、酒
    はその味付けを深めるものである・・。    

 注・・七の賢しき人=晋(しん)の七人の隠士が
     竹林で酒を交して清談にふけったとい
     う。
    隠士=俗世間を捨て静かな所に隠れ住ん
     で居る人、またそういう生活態度の人。
    清談=浮き世を離れた風流な話。

作者・・大伴旅人=おおとものたびと。665~731。
    大納言従二位。

出典・・万葉集・340。

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河風の 涼しくもあるか 打ちよする 浪とともにや 
秋は立つらん
                  紀貫之
            
(かわかぜの すずしくもあるか うちよする なみと
 ともにや あきはたつらん)

意味・・河風がまことに涼しく感じられることだ。
    風に吹かれて打ち寄せる波とともに秋は
    立つのだろうか。

    立秋の日に河原を散策して詠んだ歌です。

 注・・秋は立つらん=秋は波と一緒に立っている
     のだろうか。「立つ」は秋立つと波が立
     つを掛ける。

作者・・紀貫之=きのつらゆき。866~945。土佐
    守、従四位した。「古今和歌集」の選者。

出典・・古今和歌集・170

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石見のや 高角山の 木の間より 我が振る袖を 
妹見つらむか 
                柿本人麻呂

(いわみのや たかつのやまの このまより わがふる
 そでを いもみつらんか)

意味・・石見の、高角山の木の間から名残を惜しんで
    私が振る袖を、妻は見てくれたであろうか。

    国司として石見にいた人麻呂が、結婚して間も
    ない現地の妻を残して上京する時の歌です。

 注・・石見=島根県西部地方。
    石見や=石見の。「や」は間投助詞で強調・呼
     びかけの意を表す。・・よ。・・だなあ。
    高角山=島根県都野津町付近の高い山。
 
作者・・柿本人麻呂=生没年未詳。万葉を代表する歌人。

出典・・万葉集・132。


生ける者 遂にも死ぬる ものにあれば この世にある間は
楽しくをあらな      
                   大伴旅人

(いけるひと ついにもしぬる ものにあれば このよに
 あるまは たのしくをあらな)

意味・・生きる者はいずれ死ぬのだから、この世
    に生きている間は酒を飲んで楽しく過ご
    したいものだ。

    題意は「酒を讃(ほ)める歌」です。
    作歌動機は大宰府に伴った妻と死別して
    悲嘆と失望にあり、酒でまぎらわせよう
    としたものです。

    楽しむには、楽しみの方向に常に向いて
    おくのが大切。楽しみや喜びには苦労が
    伴っているのも事実なので、苦労は買っ
    てでもすることに通じます。

作者・・大伴旅人=おおとものたびと。665~731。
    太宰帥(そち)を経て大納言。

出典・・万葉集・349。

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