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 見れど飽かぬ 吉野の川の 常滑の 絶ゆることなく
またかへり見む      
                 柿本人麻呂

(みれどあかぬ よしののかわの とこなめの たゆる
 ことなく またかえりみん)

意味・・いくら見ても飽かない吉野は、吉野川のいつも
    滑らかな所が絶えることのないように、何度も
    来ては眺めて見たいものです。

    吉野の離宮に来て詠んだ歌です。
    山や川の清く美しい流域、そしてそこには立派
    な宮殿が建てられている。それらは見ても見て
    も見飽きないことだ。

 注・・常滑(とこなめ)=絶えず水に濡れている川の岩石に、
     水ごけがついてぬるぬるして滑りやすい所。
    またかへり見む=くり返し来ては、また眺めよう。
    吉野の離宮=持統天皇の時代、奈良県吉野郡吉野
     川の宮滝にあった離宮。

作者・・柿本人麻呂=かきのもとのひとまろ。生没年未詳。
    710年頃の宮廷歌人。

出典・・万葉集・37。