澄めば見ゆ 濁れば隠る 定めなき この身や水に
やどる月かげ     
                 藤原永範

(すめばみゆ にごればかくる さだめなき このみや
 みずに やどるつきかげ)

意味・・心が澄めばよく見えるし、濁れば隠れて
    しまう。無常なこの身は水に映る月のよ
    うなものであろうか。

    静かな水面には月は映り、波たって濁れ
    ば月は映らない。人の気持ちもこのよう
    なもので、心が穏やかな時は水面に月が
    映って美しい状態だが悩みなどがあって
    心が穏やかでなくなると月は映らなくな
    ってしまう。

 注・・定めなき=はかない、無常だ。

作者・・藤原永範=ふじわらのながのり。1180没。
    81歳。正三位宮内郷。

出典・・千載和歌集・1224。