しつたまき 数にもあらぬ 身にはあれど 千年にもがと
思ほゆるかも       
                    山上憶良

(しつたまき かずにもあらぬ みにはあれど ちとせに
 もがと おもおゆるかも)

意味・・物の数でもない俗世の身ではあるけれど、千年も
    生きていたいと思われてならない。

    この歌の気持ちは長歌として詠まれています。
                 (下記参照)    

 注・・しつたまき=倭文手纏き。倭文(しず)で作った腕
     輪は粗末なものであることから、「数にもあら
     ぬ」にかかる枕詞。
    数にもあらぬ=数える価値がない。取るに足りな
     い。

作者・・山上憶良=やまのうえのおくら。660~733。筑前
    守。遣唐使として唐に3年滞在。

出典・・万葉集・903。

長歌のあらましです。

この世に生きている限りは、無事平穏でありたいのに、
障害も不幸もなく過ごしたいのに、世の中の憂鬱で辛い
ことは、ひどく痛い傷に辛塩をふりかけるという諺、ひ
どく重い馬荷に上荷をどさりと重ね乗せるという諺のよ
うに、老いさらばえた我が身の上に病魔まで背負わされ
ている有様なので、昼は昼で嘆き暮らし、夜は夜で溜息
ついて明かし、年久しく病み続けたので、幾月も愚痴っ
たりうめいたりして、いっそうのこと死んでしまいたい
と思うけれども、真夏の蝿のように騒ぎ回る子供たちを
放ったらかして死ぬことはとても出来ず、じっと子供を
見つめていると、逆に生への熱い思いが燃え立ってくる。
こうして、あれやこれやと思い悩んで、泣けて泣けて仕
方がない。