むらさきも あけもみどりも うれしきは 春のはじめに
きたるなりけり     
                     藤原輔尹

(むらさきも あけもみどりも うれしきは はるの
 はじめに きたるなりけり)

詞書・・御堂殿の大餮(だいきょう)に招待されて詠む。

意味・・紫衣(しえ)の人も、朱衣(すえ)の人も、緑衣
    (ろくえ)の人も、一様に心が浮き立つのは、
    春の初めに着飾って御堂殿の大饗に招かれて
    参上して来たことです。

    地位が上がり、それをお祝いとして最高の権
    威者より宴会に招待された。これほど嬉しい
    ことはない、と詠んだ歌です。    

 注・・御堂殿(みどうどの)=藤原道長をさす。
    大饗(だいきょう)=宮中で催される大宴会。
    むらさきもあけもみどりも=公卿・殿上人の
     袍(ほう・上着のこと)の色をいう。「紫」
     は四位の参議以上、「朱」は五位、「緑」
     は六位の蔵人の袍(ほう)の色。
    きたる=「来たる」と「着たる」を掛ける。

作者・・藤原輔尹=ふじわらのすけただ。生没年未詳。
    大和守・従四位。1000年頃活躍した人。

出典・・後拾遺和歌集・16。