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花に染む 心のいかで 残りけん 捨て果ててきと 
思ふわが身に
                西行
             
(はなにそむ こころのいかで のこりけん すてはて
 てきと おもうわがみに)

意味・・この俗世間をすっかり捨て切ってしまったと思う
    我が身に、どうして桜の花に執着する心が残って
    いたことであろうか。

    物欲や名誉をすべて捨てて、悩みや束縛から抜け
    出て安らかな心境にある自分だと思うのに、花に
    深く心を動かされるのはどうしてだろうか。

    花の美しさに感動するだけでなく、人と共に喜び
    人と共に泣くという人の心は失わず、感動する心
    は捨てていないという境地を詠んでいます。

 注・・染む=心に深く感じること。
    てき=・・してしまった。完了の助動詞「つ」の
     連体形+過去の助動詞「き」。

作者・・西行=さいぎょう。1118~1190。名佐藤義清。
    下北面武士として鳥羽院に仕える。23歳で出家。
    高野山で仏者として修行。家集は「山家集」。

出典・・山家集・76。