思へただ 花の散りなん 木のもとに 何をかげにて
わが身住みなん           
                  西行

(おもえただ はなのちりなん このもとに なにを
 かげにて わがみすみなん)

意味・・桜の花よ、お前が散ってしまったら、その木の
    下で今後何を頼りに自分は住もうか、もはや陰
    とたのむべき何物もないことを思ってどうか散
    らないで欲しい。


    花が散ってしまった後では自分はどんな木陰に
    住んでも心が休まることがない。すなわち時代
    が変わってしまって、昔の美意識や価値観のま
    ま取り残されてしまった、という自分の悲哀を
    詠んでいます。

    花の散る前の木陰は心地よい。その半面花が散
    った後は寂しい。この「花」は恩恵という花で
    す。年金、社会保障制度、親・家族の愛、文化、
    人々とのつながり・・という花です。
 
 注・・花=「今まで被っている恩恵」を花にたとえて
      います。

作者・・西行=さいぎょう。1118~ 1190。

出典・・山家集・119。