むかし見し 主顔にて 梅が枝の 花だにわれに
物語せよ
                藤原基俊
              
(むかしみし あるじがおにて うめがえの はなだに
 われに ものがたりせよ)

詞書・・公実卿(きんざねきょう)かくれ侍りて後、かの家
    にまかりけるに、梅の花盛りに咲けるを見て枝に
    結び侍りける。

意味・・昔見たこの家の主のような態度で、梅の枝の花よ、
    せめて私に話しかけてくれ。

    実際は梅の花ではなく遺族に語りかけています。

    大黒柱の主人が亡くなり、大変困っていることで
    しよう。なにかあれば相談にのりますよ、どんな
    ことでもおっしゃってください、ということを言
    っています。

 注・・主顔=主は公実卿。
    だに=最小限の希望を表す。せめて・・だけでも。
    公実卿=藤原公実(1053~1107)・権大納言。
    かくれ侍りて=お亡くなりになって。

作者・・藤原基俊=ふじわらのもととし。1060~1142。
    従五位上・左衛門佐。「新撰朗詠集」編纂など
    和漢に通じた。

出典・・金葉和歌集・604。