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阿波池田 吉野の川の 橋に立ち 仰ぐ箸蔵寺
順礼の鈴
                                     小川正子

(あわいけだ よしののかわの はしにたち あおぐ
 はしくらじ じゅんれいのすず)

意味・・はるばる来て,阿波池田を流れる吉野川の橋
    から遠く箸蔵寺を仰いで見ていると巡礼者
    が鳴らす鈴の音が聞こえる。ああ、この巡
    礼者の中に癩患者が混じっていないだろう
    か。

    昭和9年、癩病患者救援のため、患者を探し
    面談して療養施設に入れるため土佐に行く
    旅で詠んだ歌です。当時、癩病を患うと世  
    間の目を気にして、患者を外部と接触させ
    ないように納屋などに隠し住まわせていた。
    癩を患った人も、家族の苦労を思いやり、
    巡礼者となって放浪の旅を続け行倒れにな
    っていた。

 注・・吉野の川=高知県および徳島県を流れる194
    kmに及ぶ川。日本三大大暴れの川といわれ
    ている。
    箸蔵寺=徳島県三好市池田町にある寺。江戸
    時代末期1861年再建され、国の重要文化財に
    指定されている。

作者・・小川正子=おがわまさこ。1902~1943。東
    京女子医学専門学校卒。長島愛生学園勤務。
    癩病患者救援に尽す。著書「小島の春」。

出典・・小川正子著「小島の春」。