浮草の ひと葉なりとも 磯隠れ 思ひなかけそ
沖つ白波
                詠み人知らず

(うきくさの ひとはなりとも いそがくれ おもい
 なかけそ おきつしらなみ)

詞書・・不偸盗戒(ふちゅうとうかい)

意味・・浮き草の一葉でも、磯に隠れて欲しいと思う
    な、沖の白波よ。

    たとえ浮草の葉一枚といったわずかな物でも、
    こっそり隠れて人の物をかすめ取ろうといっ
    た考えを起こしてはならないよ、盗人よ。

 注・・浮草のひと葉=わずかな物でも、という意を
     暗示。
    磯隠れ=こっそりと、という意味を暗示。
    思ひなかけそ=「思ひかけ」はここでは欲し
     いと思うこと。「な・・そ」は禁止の表現。
    沖つ白波=盗賊のこと。中国の「後漢書」に、
     白波谷に賊がこもっていたという故事から
     山賊や海賊を「白波」という。
    不偸盗戒(ふちゅうとうかい)=盗みをしない、と
     いう戒め。

出典・・新古今和歌集・1963。