とや心 朝の小琴の 四つの緒の ひとつを永久に
神きりすてし
                与謝野晶子

(とやこころ あさのおことの よっつのおの ひとつを
 とわに かみきりすてし)

意味・・私は今、鳥屋ごころ、つまり脱落感でいっぱいの
    淋しい心持です。毎朝楽しんで弾いていた四弦の
    琵琶の、その一弦を突然、神様が永久に切り落と
    してしまわれたのですから・・。

    晶子の境時代に親密だった四人の兄弟の長兄・秀
    太郎(後、東大教授、鉄幹との恋愛に反対)との永
    遠の兄弟縁が切られ、人間的な悲愁を暗示した歌
    です。

 注・・とや=鳥屋。鳥の羽根が季節によって抜け変わる
     こと。
    とや心=羽毛が抜け落ち気力なく淋しい心。
    小琴=四弦の琵琶。
    四つの緒=四弦の意と「四人の数喩」。ここでは
     四人は四兄弟を暗示。
    朝=時の朝と人生の朝の喩。四人の兄弟の幼少期
     を暗示する。
    琴の緒を切る=知己を失う。中国の故事で、琴の
     名手伯牙(はくが)が、自分の琴を唯一解し得た
     友人の鐘子期(しょうしき)の死に逢い、琴の弦
     を断って二度と琴を手にしなかったという故事
     から親し友人に死別する事。

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。18781942。堺
    学校卒。与謝野鉄幹と結婚。「明星」の花形と
    なる。

出典・・みだれ髪。