塵泥の 数にもあらぬ 我ゆえに 思ひわぶらむ
妹がかなしさ
                中臣宅守

(ちりひじの かずにもあらぬ われゆえに おもい
 わぶらん いもがかなしさ)

意味・・塵や泥のようにつまらない、物の数にも入ら
    ない私のために、辛い思いをしているあなた
    が愛しいことだ。

    越前の国(福井県)に流罪される途中で詠んだ
    歌です。自分が上手く立ち回らないばかりに
    罪を被って流罪になってしまった。自分の為
    にこのような辛い思いをさせるのがすまない
    と若妻に詠んだ歌です。

 注・・思いわぶらむ=気力を失い打ち沈んでいるだ
     ろうの意。
    かなしさ=愛しさ。いとおしい。

作者・・中臣宅守=なかとみのやかもり。生没年未詳。
    740年越前の国に流罪された(罪状不明)。

出典・・万葉集・3727。