花の色は 移りけりな いたづらに わが身世にふる
ながめしまに
                 小野小町

(はなのいろは うつりけりな いたづらに わがみ
 よにふる ながめせしまに)

意味・・花の色も私の美しさも、もはや消え失せてしまっ
    たのだ。思えば、むなしくも我が身はすっかり老
    い衰えてた。驕慢(きょうまん)な物思いにふけり
    眺めているうちに、花が春の長雨にうたれて散っ
    ていくように。

    散る前に長雨のためにすでに色あせてしまった桜
    と、ぼんやりもの思いにふけっている間に盛りを
    過ぎてしまった我が身とが重ねられています。
     
 注・・花の色=表面は花であるが、裏面に作者の容色を
     暗示している。
            いたづらに=むなしく、つまらなく。
    ふる=降ると経る(年月が過ぎる)、古る(古るび
     れる)を掛けている。
    ながめ=長雨と眺めを掛けている。
    眺め=ぼんやりと物思いに沈む。
    驕慢=おごり高ぶって人を見下すこと。

作者・・小野小町=生没年未詳。850年頃に後宮に仕えた。
    美人伝説で有名。
 
出典・・古今和歌集・113、百人一首・9。

感想・・驕慢な物思いとはどんな態度でしょうか。
    建設的なことをするわけでもなく、ぼんやりと過
    ごし物思いに沈んでいることです。
 
    例えると。

    営業の仕事に携わっているとします。
    販売目標が決められています。
    好調でこの目標以上に販売が続いている時。
    「上の人は見てくれんなぁ、こんなに努力してい
    るのに」
    「それが当たり前なんて言いはる」。
    「給料もこのところ全然上がってないし、やる気
    がなくなるよなぁ」

    販売の不振が続くと。

    「売上げ目標が高すぎるよぉ、かってに決めてし
    もうて」
    「誰も見向きもしない物を売らせてぇ。売れる物
    を開発して欲しいよなあ」「ああ、また小言を聞
    かなきゃいけんか。給料半分は我慢賃と思うか」。

    小野小町の心
    「うん、今日はよく売れた、昨日と比べて何処が
    良かったのだろうか」「よし、明日もこの方法で
    いくとしょう」
    「売上げ目標を達成したがこれは不振の時の貯金
    としょう」
  
    「今日の売上げが芳しくなかったのはどうしてだ
    ろう、あのお客さんのほめ方が悪かったかなぁ」。
    「そういえば、忙しそうにしていたなぁ、相手の
    都合も知らなくちゃ」「よし明日の作戦をたてる
    ぞ」。