春なれや 名もなき山の 薄霞
                  芭蕉
                  
(はるなれや なもなきやまの うすがすみ)

意味・・ああ、いよいよ春が来たのだなあ。春の大和路
    を心に描きながらたどる山路の、四方の名前も
    知らぬ山々に一刷毛(ひとはけ)霞が棚引いて見
    える。気持ちの良い景色だ。

    詞書は奈良に出る道すがらです。

作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1694。「野ざらし紀
    行」「奥の細道」。

出典・・野ざらし紀行。
 
感想・・「春なれや」がいい。
    待ちに待った春がやっと来たという気持ちです。
    現在のように暖房がある生活では、この気持ち
    は弱くなります。
 
    「野ざらし紀行」の中に。「野ざらしを心に風の
    しむ身かな」と詠んだ句があり、野ざらしになっ
    て死ぬかもしれない覚悟の旅立ちです。
    冬の寒い中、歩いて旅を続ける。その厳しさを経
    験した後の、やっと春になった嬉しさを詠んでい 
    ます。
    苦しく厳しい体験をした後の安らぎは、嬉しさが
    一層こみあげて来ます。                     削除