阿耨多羅 三藐三菩提の 仏たち わが立つ杣に
冥加あらせたまえ
                伝教大師

(あのくたら さんみやくさんぼだいの ほとけたち わが 
 たつそまに みょうがあらせたまえ)

詞書・・比叡山中堂建立の時。

意味・・最上の知恵を持たれる仏たちよ。私の入り立つこの
    杣山に、冥加をお与えください。

    根本中堂の建立にあたり、1000年後の世界にも、
    活き活きした姿であって欲しいと願った歌です。

 注・・阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみやくさん
    ぼだい)=梵語で、仏の最上の知恵。
    杣(そま)=「杣」は材木を切り出す山。ここでは
     比叡山をさす。
    冥加=目に見えない神仏の加護。
    比叡山中堂=大津市にある比叡山延暦寺の本堂。
     根本中堂。788年建立された。

作者・・伝教大師=でんぎようだいし。766~822。比叡山
    延暦寺を建立。天台宗の開祖。僧名は最澄。
 
出典・・新古今和歌集・1921。
 
感想・・この歌は比叡山本堂建立の時に詠んでいます。
    この地に立派な本堂が建立出来たらいいななあ、
    というのではなく、必ず立派な本堂を建立する
    という情熱が歌われています。
 
    「念ずれば花開く」という詩人の坂村真民さん
    の言葉があります。
    一つの願い事をいつも心にとどめ、成し遂げよ
    うと思っていると成就の花が咲くということで
    す。
    「あのくたら さんみやくのさんぼたい・・」
    の歌は
    これを必ず成し遂げたい、今のこの苦難から必
    ず立ち上がりたい、などの願い事を心に常に持
    ち、念ずることが大切だと言っているように思
    います。