むかし思ふ 草の庵の 夜の雨に 涙な添へそ
山ほととぎす
                藤原俊成 

(むかしおもう くさのいおりの よるのあめに なみだ
 なそえそ やまほととぎす)

意味・・かって公卿(くぎょう)として宮中に出仕していた
    頃の昔の事を思いながら、今はこの侘び住まいの
    中で、しみじみと涙を催させる夜の雨に、さらに
    悲しい涙を添えてくれるな、山ほととぎすよ。

    この歌は、白楽天の次の詩を踏まえて詠んだ歌
    です。
    「蘭省(らんせい)花の時の錦帳(きんちょう)の
    下(もと) 廬山(ろざん)の雨の夜の草庵の中」

    (かって朝廷に仕えていた頃は、花の季節には、
    綾織の帳の下で、栄誉の毎日を過ごしていたが、
    今は廬山にあって、雨の夜、草庵の中で侘びし
    く暮らしている)

    また、「山ほととぎす」は蜀の望帝の魂が化し
    てほとどぎすになったという中国の伝説にもと
    づいています。
    その説話は、
    「蜀の最後の王、望帝は位を人に譲り、逃亡し
    た。後に王位に復しようとしたが、失敗して死
    に、ほとどぎすに転生して、春が来るたびに昼
    も夜も悲しい声で鳴(泣)いた」というものです。

 注・・昔思ふ=公卿として宮中に出仕していた頃の昔。
     正三位・皇太后宮大夫として出仕、63歳の時
     出家した。
    草の庵=侘びしい住まい。
    蘭省(らんせい)=宮殿のこと。

作者・・藤原俊成=ふじわらのとしなり。1113~1204。
    正三位・皇太后宮大夫。「千載和歌集」の撰者。
 
出典・・新古今和歌集・201。
 
感想・・この歌を読んで昔の会社の出来事を思い出しま
    した。
    若い頃の事、上司の掛長がいました。好きなタ
    イプの上司ではありませんでした。それでもハ
    イハイと素直に言う事を聞いていました。無理
    な事を言われても仕方なしにやるという態度で
    す。でも掛長の立場にすれば、良く言う事を聞
    く部下の一人でした。
 
    その後私は職場を変わり、協力会社を使う立場
    になりました。元の上司の掛長も出向して課長
    として協力会社に来ました。
    その課長が私に頼み事をしにやって来ました。
    今は課長、昔は上司の掛長。その立場で私に頼
    み事をしました。
    元の上司の立場のつもりで頼みをするので、私
    はその頼みを断りました。昔の嫌なイメージも
    ありました。
    下手に出ていれば頼み事を聞いたのですが。
    
    その時の昔の上司の掛長の気持ちはどう思った
    事でしょうか。
    上記の歌「むかし思ふ草の庵の夜の雨に涙な添
    へそ山ほととぎす」の気持ちだと思いました。
    
    その後、私は、力関係はいつ変わるか分からな
    いと思いました。それからは協力会社の人達も
    同じ社員という気持ちになって無理難題を押し
    付けないようにしました。
    相手の身分での対応ではなく、誰にでも誠意の
    ある対応でなければいけないと思いました。