初雁の なきこそ渡れ 世の中の 人の心の 
あきし憂ければ   
                紀貫之
   
(はつかりの なきこそわたれ よのなかの ひとの
   こころの あきしうければ)

意味・・初雁が鳴いて空を飛ぶのは秋が悲しいからなの
    だが、私が泣き暮らすのは世の人の心に飽きら
    れたことを悲しむからなのだ。
 
       失恋の歌です。
    
注・・初雁=「なき」の枕詞。
   なきこそ渡れ=空を鳴いて渡る事と、歌の作者
    が泣き暮らす事を掛けている。
   あき=「秋」と「飽き」とを掛ける。
   憂し=悲しい。

作者・・紀貫之=きのつらゆき。866~945。古今和歌
    集の撰集に主導的役割を果たす。
 
出典・・古今和歌集・804。
 
感想・・ここでは、「飽きられる」ことは失恋を指して
    いるのだか、その他に人に飽きられる、嫌われ
    る事について、漱石は次のようにいっています。

   「知に働けば角が立つ、情に棹させば流される意
    地を通せば窮屈だ、とかくこの世はすみにくい」

   (理性のみで事にあたると、他人との間に角が立
    って気まずくなり、かといって、感情に走って
    行動すると、とんでもないことになってしまう。
    だからといって、自分の意地を押し通すと窮屈
    な思いがする。人間社会は住みずらいものだ)

    人間関係を良好に保つには誠意が基本という事
    だろうか。