落ちて行く 身と知りながら もみぢ葉の 人なつかしく
こがれこそすれ
                    皇女和宮

(おちてゆく みとしりながら もみじばの ひと
 なつかしく こがれこそすれ)

意味・・燃えるような紅葉の彩りは、しかし、よく見ると
    風に舞って落ちてゆく。その身の不運を知りなが
    らも、その不運を嘆くだけでなく、その一葉一葉
    にも生命があり、それを燃やし尽くしている。
    私は、政略結婚でこれから嫁いで行くのだが、不運
    を嘆くのでなく、相手の心に打ち解け、いちずに
    恋慕い尽してゆかねばと思う。

    徳川将軍家茂(いえもち)に16歳で嫁いで行く道中
    で詠んだ歌です。

 注・・なつかしく=心にひかれる。
    こがれ=焦がれ。いちずに恋したう。思い焦がれ
     る。

作者・・皇女和宮=こうじょかずのみや。1846~1877。
    31歳。政略結婚で14代徳川将軍家茂(いえもち)
    に嫁ぐ。

出典・・松崎哲久著「名歌で読む日本の歴史」。
 
感想・・紅葉はもうすぐ落葉するのは分かっているが落
    葉するまでは、頑張れるだけ頑張って燃えてい
    る。
    皇女和宮は好きな人と結婚出来なかったけれど、
    相手の良さを見つけて好きになっていこう、好き
    になるのだと言っている。
    どんな悪条件に置かれても、希望を失わずに力一
    杯生きる姿が素晴らしい。