何をして 身のいたづらに 老いぬらん 年の思はむ
ことぞやさしき            
                   詠人知らず
                  
(なにをして みのいたずらに おいぬらん としの
 おもわん ことぞやさしき)

意味・・私はいったい何をして、このようにむなしく年
    老いてしまったのだろうか。一緒に過ごして来
    た年が、私のことを何と思っているであろうか
    と、年に対して恥ずかしいことである。
 
    とりたてて言えるような事は何もなく、むなし
    く年老いたと、過去を顧みた歌です。

 注・・いたづらに=無用の状態に、むだに。むなしく。
    やさしき=恥ずかしい。

出典・・古今和歌集・1063。 
 
感想・・年を取り年功を積めばそれなりの、人格のある
    人になりたいと詠んでいます。
 
    昔、30歳代の若い時でしたが交通事故を起こ
    しました。一旦停止をせず左右の確認をしなく
    て進んだために、相手の車の横腹にぶつかった
    事故でした。
    私は謝り全面的に悪いので車の修理代は全額支
    払うと約束して別れました。
    その後保険の請求に行ったところ、片方が全面
    的に悪いということはあり得ない、相手も不注
    意があったはずだ、7対3になるように再交渉を
    して来て欲しいと言われました。
    重い気持ちで相手の家に行きました。相手も私
    と同じくらいの年頃です。
    相手は自分は一つも落ち度はないので修理代は
    全部払って欲しいと言い張ります。私も自分が
    全面的に悪いと思っているので、相手の落ち度
    を指摘出来ません。ただ保険屋が再交渉して少
    しでも譲歩してくれと言われたと言うのみです。
    隣の部屋で埒のあかないのを聞いていた相手の
    父親が出て来て、息子に向かって言いました。
    「お前の言い分は分かる。間違っていない。で
    も相手も困っているので一歩譲ってやれないか。
    怪我をしなかったのが幸いだと思えば譲れるだ
    ろう」と仲介に入ってくれました。
    その結果7対3の過失という事で解決しました。
 
    相手の父親に感謝しました。そして自分の損得
    の勘定より相手への思いやりを大切にする事の
    重要さを教えられました。