我かくて 憂き世の中に めぐるとも たれかは知らむ
月の都に              
                  源氏物語・浮舟

(われかくて うきよのなかに めぐるとも たれかは
しらん つきのみやこに)

詞書・・不本意ながら生き長らえて(三角関係に苦悩
    して自殺をはかるが助けられて)、小野の地
    で月を見て詠む。

意味・・私がこうして情けない世の中に巡り巡って、
    生き長らえて月を見ているとは、同じ月が
    照らしているであろう都では誰が知るだろ
    うか。

    自殺を図って助けられたが、苦悩は去らず
    困惑している気持ちを誰も知ってくれる人
    はなく、寂しく月を見ている気持ちを詠ん
    でいます。
 
    浮舟は薫と匂宮との三角関係に苦悩して宇
    治川に投身するが、失神している処を僧に
    助けられ、尼と共に小野の地に住んでいて
    詠んだ歌です。    
   
 注・・小野=京都市左京区上高野から大原の地。
 
出典・・源氏物語・浮舟の巻。
 
感想・・華やかな宮廷生活をしていたのに、自殺行
    為の結果、みすぼらしい生活を余儀なくさ
    れた苦しさを詠んだ歌だと思います。
    昔の同僚が見たらびっくりするだろうし、
    もう会わす顔もない。
 
    このような例が私の身近にあります。
    義弟ですが、今は失業で苦しんでいます。
    以前は景気が良かったので給料も多く、マン
    ションを買ったり、外車を買って乗り回して
    いました。
    ところが、会社の景気が悪くなりました。
    そこて義弟は遠方の地に転勤を命じられまし
    た。義弟はそんな所に行けるかと怒って会社
    を辞めてしまいました。会社の思うつぼです。
    首にしたいところを辞めてくれたので喜んで
    います。
    会社を辞めたのは結果的に自殺行為でした。
    義弟は再就職を試みましたが、給料が安いの
    で、働かずに失業保険と退職金で生活してい
    ました。働かないので退職金も底をつきまし
    た。
    今はどうしているだろうか。月を見ては同僚
    の顔を思い出し、自分がこんなに落ちぶれた
    とは知らないだろうなあと、会社を辞めた事
    に後悔しているだろうか。
 
    人生はちよっとした油断で転落するものです。
    山谷のある人生。谷に落ちた時は歯を食いし
    ばって行かなければより一層の深い谷に落ち
    込むと思いました。