憂き身とは なに嘆くらん かずならで ふるこそやすき
この世なりけり 
                   頓阿法師
              
(うきみとは なになげくらん かずならで ふるこそ
 やすき このよなりけり)

意味・・なんで憂い辛い身だと嘆くのか。取るに足りない
    身で過ごす方が、この世は気楽に送れるものなの
    に。

    憂き身を慰めた歌です。
    実力以上の事を得ようと望めば、それなりの憂い
    を感じる。欲を、実力がない身分だと思って控え
    目にすれば、辛さも半減し気楽な人生が送れる。

 注・・憂き身=悲しい身の上、辛い事の多い身。
    かずならで=数える価値がない、取るに足りない。
    ふる=経る。月日を送る、過ごす。

作者・・頓阿法師=とんあほうし。1289~1372。俗名は
    二階堂貞宗。和歌四天王と称された。

出典・・頓阿法師詠(岩波書店「中世和歌集・室町篇」)


感想・・人が嫌がる職場に3K職場があります。汚い・き
    つい・危険な職場です。給料が少ない、休暇が取
    れない、帰れない(長時間労働)が加わると、人は
    こんな職をいよいよ敬遠することになります。
    現にこんな職場がありそこで働く人も多くいます。

    上記の歌で「かずならで」、数える価値が無い人・ 
    取るに足りない人、いわゆる最低の人が3K5K職
    場で働く事が多いと思われます。

    「数ならで」の人は賞賛されなくても、報酬が少
    なくても当たり前、仕方がないと諦めがつく。
    汚い、きつい、危険な仕事に就いても我慢が出来
    る。でも、気楽ではなく辛い思いは人一倍、と思
    います。
    それなのに、頓阿法師は「取るに足りない身で過
    ごす方が、この世は気楽に送れる」といっている。

    何かで自分が辛い思いをした場合、「数ならぬ人」
    すなわち自分より下の者と比較して見る。気持を
    最低の者になったつもりで、その辛さを考えて見る。
    そして今の辛さを比較して見る。そうすれば今の辛
    さも軽減され、我慢が出来るのではなかろうかと思
    います。それにしても大変な努力が要るものですね。