家むらを 千尋の谷の 底に見て 杉の梢を
ゆく山路かな     
                伴林光平

(いえむらを ちひろのたにの そこにみて すぎの
 こずえを ゆくやまじかな)

意味・・人家の群がっているのを、深い谷底に見ながら
    杉の梢の山路を通っている。

    奈良県吉野郡大塔村の険しい山道で、深い谷底
    が眼下に見える尾根の道。この道を倒幕の天誅
    組の一人として行軍の時に詠んだ歌です。

    山道の険しさは、行く末の厳しさの象徴でもあ
    り、理想に生きようとする者の硬い決意の表れ
    でもあります。

 注・・家むら=人家の群がっている所。
    千尋の谷=深く長い谷。

作者・・伴林光平=ばんばやしみつひら。1813~1864。
    倒幕の天誅組に加わわるが捕らえられ獄死する。

感想・・吉野杉を見上げるような厳しい山路。一歩一歩
    歩みを進めている。緑の切れ目から下界を見て、      
    よくもここまで高度をかせいだと思う。これか
    ら向かう所はまだまだ遠い。ゆっくりでもよい
    立ち止まらずに、一歩一歩歩みを進めよう。

    目標に向けて地味でもよいので、一歩一歩進め
    ていれば、やがて高い目標にたどり付くものです。