わが思ふ ことのしげさに くらぶれば 信太の森の
千枝はかずかは            
                   増基法師

(わがおもう ことのしげさに くらぶれば しのだのもりの
 ちえはかずかは)

意味・・私の悩むことの多さに比へれば、信太の森の楠の木
    の千枝も物の数ではない。

    悩みは自分だけでなく誰でも持っています。挫(くじ
    )けずに生きていきたいものです。

 注・・思ふ=思い悩む。
    信太の森=和泉国(大阪)にある森、楠木が多い。
    かず=数。多数。
    かは=反語の意を表わす。

作者・・増基法師=ぞうきほうし。生没年未詳。比叡山の
    法師。

出典・・詞花和歌集・365。

感想・・悩みの数は少なくしたいもの、そのヒントとして
    の感想です。
    ある女性が結婚するにあたって、夫となるべき人
    からこう言われました。「母が、烏が白いと言っ 
    たら、烏は黒色ではなく白い色に見えるような目
    を持つように」。その後彼女の結婚は想像以上に
    惨めなものであり、忍耐と自分との闘いの連続と
    なりました。
    その彼女が明るく自信に溢れ若々しくなったとい
    う。
    辛い結婚生活を通して学んだことは、私の目に黒
    と見えることでも、人により白に見えている場合
    があると分ったのです。十人いれば文字通り十色
    の物の見方があると分ったのです。そらから相手
    の物の見方を許し、それを理解した。その上で自
    分の考えや意見を述べたそうです。
    物事を既成観念や先入観で決め付ける習慣が根深
    く入り込んでいる事を反省したそうです。

    自分の先入観を横に置いて相手の立場に立って見
    る。言うことは易すいが実行は難しいものです。
    でも、そういう気持ちを持つ事が悩みの数を減ら
    す一歩だと思います。