心だに いかなる身にか かなふらむ 思ひ知れども
思ひ知られず      
                                          紫式部

(こころだに いかなるみにか かなうらん おもい
 しれども おもいしられず)

意味・・私の気持ちの中で、どんな身の上になった
    らいいのだろう。どんな境遇にいても思い
    通りにならないとは知っているけれど諦め
    きれない。
    
    自分で満足のいく身の上というようなもの
    など、ありはしない。それは承知している
    けれど、諦めきれるものではない。

    他人が羨望するような良い所に就職出来た
    ものの、その中での人間関係が上手く行か
    ない。自分の思い通りになれるものではな
    いと、分かっていても何とかならぬかと諦
    めきれない、というような気持ちを詠んで
    います。    

 注・・心だに=気持ちの中で。
    いかなる身にか=どんな境遇の身であって
     も。
    かなふ=適ふ、思いどおりになる。
    思ひ知れども=道理などをわきまえる、悟る。
    思ひ知られず=理解できない、悟れない、
     諦めきれない。

作者・・紫式部=973頃~1019頃。藤原為時の娘。
      「源氏物語」「紫式部日記」の作者。

出典・・ライザ・ダルビー著「紫式部物語」。 

感想・・難しい歌です。
    一種のいじめの問題として受け止めました。

    10人10色。人それぞれ考え方や思っている
    事が違う。立場も違います。
    自分は間違った事をしていないと思っていても
    ある人から見ればけしからん奴と見える。
      
      例えば新しい職場に行き、不便な所を改善したら
    同僚は良くしてくれたと褒めてくれるとは限らない。
    前任者が放置していたと恥をかかせやがった。
    こんちきしょうめ。となる。
    自分が間違っていれば謝ることも出来るが、正しい
    事をしたと思っているので謝れない。

    自分の常識とその場の常識の違い。
    自分の常識で意思を通すと対立する。
    対立はいじめにつながる。

    このような問題を提起した歌に思いました。