数ならで 心に身をば まかせねど 身にしたがふは
心なりけり            
                 紫式部

(かずならで こころにみをば まかせねど みに
 したがうは こころなりけり)

意味・・私は物の数でもないので、この身を心の思う
    ままに振舞えないけれども、逆に身に従属す
    るものは心なのです。

    運命とは一介の私の力では動かせないものだ、
    だがその運命に素直に従っていけば、自然と
    心もそれに添っていくものである。

    自分の身の上が予想した通りにならなかった
    ので、思いつめて詠んだ歌です。

    この状況を事例で示すと、
    会社勤めで、辞令の時期に昇進を期待してい
    たのだが、予想に反して関連会社への出向と
    なった。最初は悔しい思いであったが、出向
    先に慣れて来ると住めば都となった。

 注・・数ならで=数える価値がない、取るに足りな
     い。

作者・・紫式部=むらさきしきぶ。970頃~1016頃。
    藤原宣考は夫。藤原道長に見出され、その娘
    の中宮彰子に出仕。「源氏物語」。

出典・・ライザ・ダルビー著「紫式部物語」。

感想・・現実を受け入れる事の大切さを詠んでいます。

    私は実力が無いので思った通りに成りません。
    その反面、意に反した事になっても私の気持は
    それに慣れて来ます、と歌っています。

    世間は思い通りには行きません。意に反した事
    が多々起こります。だからと言って悔しい思い
    にふて腐ってばかりではおれません。
    ふて腐れても元には返りません。
    もう元には戻らないものと早く諦めることです。
    悪いと思う環境に慣れる事です。住めば都とい
    います。悪い環境でも良い面も多くあります。

    現実を受け入れるとは、今の自分の置かれた立
    場を認めて、前向きに生きて行く事だと思いま
    す。