名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2021年03月

5883

霰ふる 音にも世にも 聾傘
                 長谷川馬光

(あられふる おとにもよにも つんぼがさ)

意味・・霰が降るなかに傘をさしてゆくと、傘に
    ぱらぱらと音がうるさいほどあるはずだ
    が、年をとって耳が遠くなったので霰の
    音もそれほどには聞こえず、そのように、
    公の勤めをやめた自分は、世の中の動き
    にも無頓着に、遁世した者のような暮ら
    し方をしている。

 注・・世にも=音が聞こえないように、世間の
     ことにもうとくなることをいう。
    聾傘=傘に降る霰の音が聞こえず、また
     世間のことにも関心をもたないこと。
    遁世(とんせい)=世を逃れて隠れること。
     隠居すること。

作者・・長谷川馬光=はせがわばこう。1685~
            1751。山口素堂門下。

出典・・小学館「近世俳句俳文集」。

0007

 時が来て ランプがついて 音楽も 流れ始めて 
人は華やぐ
                 西村由佳里

(ときがきて ランプがついて おんがくも ながれ
 はじめて ひとははなやぐ)

意味・・開演の時間が来て、ランプも点いた。音楽に
    合わせて華やかにダンスが始まった。リズム
    は軽やかにワルツは舞う。楽しい一時の始ま
    りだ。

    ワルツ曲・参考です。
https://youtu.be/IoS1_CRS5fA?list=RDU60aqpE90Jk

作者・・西村由佳里=にしむらゆかり。1976~ 。
    立命館大学大学院卒。

出典・・アメーバーブログ。

0252

 秋風の いたりいたらぬ 袖はあらじ ただわれからの
露の夕暮
            

(あきかぜの いたりいたらぬ そではあらじ ただ
 われからの つゆのゆうぐれ)

意味・・秋風の吹き及ぶ袖、吹き及ばない袖の区別は
    ないであろう。それなのに、私の悲しさ故に
    私の袖は涙の露となって濡れる寂しい秋の夕
    暮れである。

    秋風は誰の袖にも吹くのに、夕暮れに露が置
    くように、自分の袖だけが哀感の涙で濡れて
    くる。

    本歌は古今集の次の歌です。

   「春の色のいたりいたらぬ里はあらじ 咲ける
    咲かざる花の見ゆらん」 (詠み人知らず)

   (春はどこでも同じように来るもので、春の及
    ぶ里、及ばない里の区別はないであろう。そ
    れなのにどうして、里によって、咲いている
    花、咲いていない花の区別が見えるのであろ
    うか。)

 注・・われから=我から。自分ゆえ、自分が原因で。

作者・・鴨長明=かものちょうめい。1155~1216。
     「方丈記」。

出典・・新古今和歌集・366。

1852


卯の花も いまだ咲かねば ほととぎす 佐保の山辺に
来鳴き響す
                   大伴家持

(うのはなも いまださかねば ほととぎす さほの
 やまべに きなきとよもす)

意味・・卯の花もまだ咲かないのに、ホトトギスは早くも
    やって来て佐保の山辺でもう鳴きたてている。

    思いかけずに早くホトトギスがやって来た喜びを
    歌っています。卯の花はホトトギスが来るととも
    に咲くものとされていました。

 注・・佐保=大伴家持の邸宅がある所。
  
作者・・大伴家持=おおとものやかもち。718~785。大伴
    旅人の長男。越中(富山)守。万葉集の編纂を行う。

出典・・万葉集・1477。

0135

 思うこと 一つかなえて また一つ 三つ四つ五つ
六つかしの世の中

(おもうこと ひとつかなえて またひとつ みっつよっつ
 いつつ むつかしのよのなか)

意味・・欲というものには限りがない。一つの事が叶うと、
    また一つ、それが叶えばさらにと、どんどん増えて
    いく。世の中は難しいものだ。

    目に見え形に現れる物欲、金銭欲はまだいい。心が
    からむものになるとどうしょうもない。仏教では無
    明煩悩(むみようぼんのう)と呼んでいるが、整理し
    で三毒と言っている。すなわち貪欲(どんよく・欲に
    かられる事)・瞋恚(しんい・恨み、怒る事)・愚痴(
         ぐち・現状に不満を持つこと )の三煩悩がある。

    自分を今日より明日、一歩でも二歩で向上させたい
    という欲、またものの道理・人の道を理解したい
    いう欲もある。これは良い欲である。

    参考は三浦綾子の言葉です。

    九つまで満ち足りていて、 十のうち一つだけしか不
    満が無い時でさえ、 人間はまずその不満を真っ先に
    口から出し、 文句を言い続けるものなのだ。 自分を
    省みてそう思う。 なぜ私たちは不満を後回しにして、
    感謝することを先に言わないのだろう。

出典・・山本健治著「三十一文字に学ぶビジネスと人生の極意」。

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