親展の状燃え上る火鉢かな
夏目漱石
(しんてんの じょうもえあがる ひばちかな)
意味・・親展の手紙が届いた。読んでみると、家族の誰
にも知らせたくない。幸いにこの手紙が来た事
は誰も知らない。見られたら大変だ。急いで火
鉢にくべて燃やしてしまった。
仲の良い夫婦でも、知られたらまずい事がある。
知られたら一時的にせよ必ず仲が悪くなる。自
分がまずい事をしたのだから謝れば良いのだが、
それは出来ない。知らぬが仏だ。隠し通すしか
ない。
注・・親展=手紙・封書を受取人が開封する事を求め
たもの。
状=手紙、書状。
作者・・夏目漱石=なつめそうせき。1867~1916。
東大英文科卒。小説家。
出典・・大高翔著「漱石さんの俳句」。