名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2019年03月


今ぞ知る 民も願ひや 久方の 空にみづほの
国さかふなり     
                    招月正徹 

(いまぞしる たみもねがいや ひさかたの そらに
 みずほの くにさかふなり)

意味・・今こそ分かった、国民たちの願望も永久に
    満たされるように、日本の国の、いよいよ
    栄えていることが。

    国民の願望が叶えられるところに日本国の
    繁栄があることを詠んでいます。

    民が富むと年貢も増えて国も栄える。年貢
    を取りすぎたり、戦争が多いと民が貧しく
    なり国の繁栄にはならない。

 注・・久かた=「空」の枕詞。永久の願いの意を
     こめる。
    みづほの国=日本国の美称。「みつ」は空
     に「満つ」を掛ける。

作者・・招月正徹=しょうげつしょうてつ。1381~
    1459。招月は雅号。室町中期の歌僧。
 
出典・・正徹詠草(岩波書店「中世和歌集・室町編」) 

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夏山や 一足づつに 海見ゆる  
                    一茶

(なつやまや ひとあしずつに うみみゆる)

意味・・うっそうと茂る樹木を分けて、汗まみれ
    で山路を登りつめ、ようやく頂上近くに
    なると、視界が開け、一足ごとに明るい
    夏の海が姿を現してくる。その輝くよう
    な青さと広がりに、息を飲む思いである。

    海に近い小高い山に登った時に詠んだ歌
    です。

作者・・一茶=いっさ。小林一茶。1763~1827。
    長野県 柏原の農民の子。3歳で生母と死
    別、継母と不和のため15歳で奉公生活に
    辛酸をなめた。
 
出典・・笠間書院「俳句の解釈と鑑賞辞典」。


せきもあへぬ 涙の川は はやけれど 身のうき草は
流れざりけり     
                  源俊頼

(せきもあえぬ なみだのかわは はやけれど みの
 うきくさは ながれざりけり)

意味・・せき止められない我が涙は川となってたぎ
    り流れているが、浮草のような我が身の憂
    さは、ながれずにそのままでいることよ。

    身分の低い人に官位昇進の遅れをとって、
    嘆いた歌です。いくら泣いても憂さの晴れ
    ないくやしさの気持ちを詠んでいます。
       
 注・・あへぬ=敢へぬ、たえる、こらえる。
    身のうき草=「浮草」に「憂き」を掛ける。
    流れざり=憂さの消えないことの比喩。

作者・・源俊頼=みなもとのとしより。1055年頃生。
    75歳。左京権太夫。従四位。

出典・・金葉和歌集・609。 


老いぬれば さらぬ別れの ありといへば いよいよ見まく
ほしき君かな       
                    伊登内親王
              
(おいぬれば さらぬわかれの ありといえば いよいよ
 みまく ほしききみかな)

意味・・私もこの年になったので、永久の別れがいつ
    あるか分かりません。そのせいで、この頃は
    あなたにますます会いたくなりました。

    60歳の母親が36歳の子供に会いたくて詠んだ
    歌です。

 注・・さらぬ別れ=避らぬ別れ。人間として避けら
     れない別れ。死別。
    いよいよ=ますます。

作者・・伊登内親王=いとないしんのう。生没年未詳。
    桓武天皇の皇女。在原業平の母。

出典・・伊勢物語・84、古今和歌集・900。

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われのみや あはれと思はむ きりぎりす 鳴く夕かげの
大和なでしこ        
                    素性法師
                
(われのみや あわれとおもわん きりぎりす なく
 ゆうかげの やまとなでしこ)

意味・・私ひとりだけがしみじみ可憐な花であると、
    めでるだけでいいのであろうか。こおろぎの
    鳴く夕日影の中でひっそりと咲く、この大和
    なでしこは。

    夕日影に照らされている河原撫子の可憐な美
    しさを、自分ひとりだけで眺めるのは、惜し
    い、出来れば好きな人と一緒に眺めたい。

 注・・われのみや=「や」は反語の意。
    あはれ=しみじみと心を打つさま。すてきだ。

    きりぎりす=今のこおろぎ。
    夕かげ=夕日。
    大和なでしこ=河原撫子。秋の七草のひとつ。


作者・・素性法師=そせいほうし。~909頃。遍照
    僧正の子。

出典・・古今和歌集・244。170906

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