名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2019年02月


かかる世に かげも変らず すむ月を 見る我が身さへ
恨めしきかな            
                  西行

(かかるよに かげもかわらず すむつきを みるわがみ
 さえ うらめしきかな)

意味・・戦乱の続く世に、常に変る事のない光を放っている
    月が恨めしいことだ。そしてこの世を見てどうしょ
    うも出来ない我が身までも恨めしく思われることだ。

    戦乱の続く世に、変らぬ平和な光を放つ月を羨まし
    く思い、何も出来ない自分を恨めしい思いで詠んだ
    歌です。

 注・・かかる世=このような世。前書きにより、保元の乱
     が起き、崇徳院が思いもよらぬ事に負けてしまい、
     出家してしまった、このような世。

    保元の乱=1156年に皇位継承問題や摂政家の内紛に
     より朝廷が後白河天皇方と崇徳上皇 方に分裂し、
     双方の武力衝突に到った政変。

作者・・西行=1118~1190。

出典・・歌集「山家集・1227」。

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とんぼ釣り 今日はどこまで 行ったやら
                      千代女 
 
(とんぼつり きょうはどこまで いったやら)
 
意味・・夏のたそがれに千代が針仕事をしていると、もう
    日も暮れかかって来た。子供はまだ帰らないが、
    いつもならもう帰る頃だが・・と思って、傍らに
    子供のいないのをもの寂しく感じた時に、子供が
    帰って来る。
    「今日はお前、いつもより遅いじゃないか」と尋
    ねると、
    「今日はとんぼ釣りして、どこどこまで追いかけ
    て行った」と物語ったことが折々あった。
    だから、のちにこの子が亡くなって、待っても待
    っても帰って来ない時、今日はまたどこまで行っ
    たであろうかと、子供が側にいないのを寂しくな
    り、ふと思う。

作者・・千代女=ちよじょ。1703~1775。加賀(石川県)
    松任の表具師の娘。俳句は各務支考(かがみしこう)
    に師事。
 
出典・・新渡戸稲造著「自分をもっと深く掘れ」。
 


ちち君よ 今朝はいかにと 手をつきて 問ふ子を見れば
死なざりけり       
                   落合直文

(ちちきみよ けさはいかにと ておつきて とうこを
 みれば しなざりけり)

意味・・「お父様、けさはご機嫌いかがですか」と畳の
    上にかしこまり、手をついて、朝の挨拶をする
    わが子を見ると、かりそめの病に臥している我
    が身ながら、これくらいのことでは死なれない、
    もっともっと長生きせねばこの子たちがかわい
    そうだという気持ちがひしひし起こってくる事
    だ。

 注・・いかにと=「おはしますか」等の句を省略。

作者・・落合直文=おちあいなおふみ。1861~1903。
    明治21年「老女白菊の花」を発表して国文学の
    普及に尽くす。

出典・・学灯社「現代短歌評釈」。


身をしれば 人の咎とも おもはぬに うらみがほにも 
ぬるる袖かな           
                  西行

(みをしれば ひとのとがとも おもわぬに うらみ
 がおにも ぬるるそでかな)

意味・・身の程を知っているので、あの人のつれなさ
    を悪いとは思わないのに、いかにも恨めしそ
    うな様子で涙に濡れる私の袖だ。

    取るに足りない身なので、冷淡な仕打ちを受け
    けるのも仕方がないと思いつつ、恨まずにいら
    れない悔しい気持を詠んでいます。
    
 注・・咎(とが)=欠点、罪。
 
作者・・西行=さいぎょう。1118~1190。後鳥羽院の
    北面武士であったが、23歳で出家した。
 
出典・・新古今和歌集・1231。

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盗人にとり残されし窓の月
               良寛

(ぬすびとに とりのこされし まどのつき)

詞書・・五合庵へ賊の入りたるあとにて。

意味・・泥棒が庵に入って来た。しかし庵の中には
    目ぼしい物は一つもない。やむを得ず泥棒
    は、役にもたたない物を手にして帰った。
    泥棒を思いやって窓から外を眺めると、た
    だ盗り忘れられた月だけが、明るく輝いて
    いることだ。

    盗る物がなく泥棒が感じた悲しみを見ると、
    可哀そうな泥棒だ。役に立つ物は無いが、
    お月さんなら提灯代わりになるものを、盗
    り忘れている。

    良寛のおおらかさ、博愛の気持ちがにじみ
    出ています。

作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。越後の
     神官の子として生まれる。18歳で曹洞宗光
    照寺に入山

出典・・谷川敏朗著「良寛全句集」。



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