名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年11月


わび人の 涙に似たる 桜かな 風身にしめば 
まづこぼれつつ 
               西行

(わびびとの なみだににたる さくらかな かぜみに
 しめば まずこぼれつつ)

意味・・世を住み詫びている人の涙に似た桜であることだ。
    憂き世の風が身に沁(し)みると真っ先に涙がこぼ
    れるように、風が吹くと先ず散ってしまうものだ。

    花見をして楽しむ人がいる一方、いじめられたり
    リストラされたり、病身であったりして気落ちし
    て途方にくれる人もいる。涙を流す人もいる。

 注・・わび人=世捨て人、失意の人、思いわずらう人。
     つらく思う人。
    憂き世=つらいことの絶えないこの世。

作者・・西行=1118~1190。

出典・・山家集・・1035。 

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                 うぐいす

深草の 谷のうぐひす 春ごとに あはれ昔と
音をのみぞなく
                源実朝
             
(ふかくさの たにのうぐいす はるごとに あわれ
 むかしと ねをのみぞなく)

意味・・深草の谷の鶯は、春がくるごとに、ああ昔が
    恋しいと声をたてて鳴いている。

    深草の帝(仁明天皇)を偲ぶ歌です。

 注・・深草=京都市伏見区深草。歌枕。850年に他界
     した仁明天皇はこの地に葬られた。

作者・・源実朝=1192~1219。28歳。頼朝の二男。右
    大臣になった翌年、鶴岡八幡宮で暗殺される。

出典・・金塊和歌集・13。

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                 桃の花

ももという 名もあるものを 時のまに 散る桜にも
思ひおとさじ        
                                            紫式部

(ももという なもあるものを ときのまに ちるさくら
 にも おもいおとさじ)

意味・・桃は百(もも)、百年にも通じる名を持っている
    ではないか。すぐに散る桜に劣るものか。

    桜ばかりがもてはやされるのはなぜだろうか。
    他に美しい花はいくらでもあるのに、他の花を
    歌人はめったに詠もうとしない。なぜ私たちは
    梅と桜ばかり褒めるのだろう。

      目立たなくて浮かばれない友人に、人にない良
    いところを持っているのにと、励まして詠んだ
    歌です。    

 注・・もも=「桃」と「百(もも)」を掛ける。
    時のま=時の間、少しの間。
    おとさじ=落とさじ。劣った扱いをしない。

作者・・紫式部=970~1016。「源氏物語」が有名。

出典・・紫式部集。 


物皆は 新たしきよし ただしくも 人は古りにし 
よろしかるべし      
                 柿本人麻呂

(ものみなは あらたしきよし ただしくも ひとは
 ふりにし よろしかるべし)

意味・・もちろん物はみんな新しい方が良いに決まって
    いる。とは言うものの、人には古びれば古びた
    なりのよさがあるように思われる。

    空威張りをしているが老いを嘆いた歌です。
    とはいうものの、年老いて良いこともあります。
    怖さが少なくなる・責任が小さくなる・自由の
    時間が多くなる・大らかになる・孫の可愛さが
    分る・分ってもらえなくても認められなくても
    そんな事は取るに足りないと考える事が出来る
    ・・・。

 注・・ただしくも=但し。

作者・・柿本人麻呂=かきのもとのひとまろ。生没年未詳。
    710頃没。万葉集を代表する歌人。

出典・・万葉集・1885。 


思へただ 花の散りなん 木のもとに 何をかげにて
わが身住みなん           
                  西行

(おもえただ はなのちりなん このもとに なにを
 かげにて わがみすみなん)

意味・・桜の花よ、お前が散ってしまったら、その木の
    下で今後何を頼りに自分は住もうか、もはや陰
    とたのむべき何物もないことを思ってどうか散
    らないで欲しい。


    花が散ってしまった後では自分はどんな木陰に
    住んでも心が休まることがない。すなわち時代
    が変わってしまって、昔の美意識や価値観のま
    ま取り残されてしまった、という自分の悲哀を
    詠んでいます。

    花の散る前の木陰は心地よい。その半面花が散
    った後は寂しい。この「花」は恩恵という花で
    す。年金、社会保障制度、親・家族の愛、文化、
    人々とのつながり・・という花です。
 
 注・・花=「今まで被っている恩恵」を花にたとえて
      います。

作者・・西行=さいぎょう。1118~ 1190。

出典・・山家集・119。

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