名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年11月


ぼたん切って 気のおとろひし ゆふべかな  
                       蕪村

(ぼたんきって きのおとろいし ゆうべかな)

意味・・花の王といわれる牡丹が美しく咲いた。活け花に
    して楽しもうか、切らずにこのままで楽しもうか
    と、あれこれと考えたあげく活け花にすることに
    した。蕪村流といえるような活け花に仕上げ終えた。
    その後は緊張感が一気に萎(な)えてしまった。

    高浜虚子の「十五代将軍」という小説の中で徳川
    慶喜(よしのぶ)に呼ばれて俳句を講じている時、
    この句を言うとすごく感銘したという。徳川三百
    年の大政を奉還した時の気持が「気のおとろえし」
    だったのです。

作者・・蕪村=ぶそん。与謝蕪村。1716~1783。

出典・・おうふう社「蕪村全句集」。

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花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは
わが身なりけり       
               藤原公経

(はなさそう あらしのにわの ゆきならで ふり
 ゆくものは わがみなりけり)

意味・・花をさそうように散らす嵐の吹く庭に、
    雪のように桜の花が降り敷くが、降り
    行くものは花吹雪ではなくて、老いて
    ゆく私の身なのであった。

            太政大臣までのぼりつめ、何もかも自
    分の思い通りになって比類のない権勢
    をふるい、栄華を極めた公経であるか
    らこそ、容赦なく忍び寄る老いの嘆き
    が人一倍大きい事を詠んでいます。

 注・・花さそう=花をさそって散らす。
    嵐=山風。
    ふり=「降り」と「古り(老いる)」を
     掛ける。

作者・・藤原公経=ふじわらのきんつね。1171
    ~1244。太政大臣。

出典・・新勅撰和歌集・1052、百人一首・96。

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もろともに あはれと思へ 山ざくら 花よりほかに
知る人もなし
      
                  僧正行尊
          

(もろともに あわれとおもえ やまざくら はなより
 ほかに しるひともなし)

意味・・私がお前をしみじみといとしく思うように、
    お前もまた私のことをしみじみといとしく
    思ってくれ、山桜よ。花であるお前以外に
    心を知る人もいないのだから。

    吉野の山に修行のため入山した際、風に折
    れた枝に美しく咲く桜を見て詠んだ歌で、
    努力してもまだ報われない自分の姿にムチ
    を打っています。

 注・・もろともに=いっしょに。
    あはれ=いとしい、寂しい、悲しい。
    知る=単なる知人というより、心の通い
     会う人・共感し合える人の意。

作者・・僧正行尊=そうじょうぎょうそん。1055
    ~1135。平等院大僧正。

出典・・金葉和歌集・521、百人一首・66。

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年ふれば よはひは老いぬ しかはあれど 花をし見れば
物思ひもなし       
                    藤原良房
          

(としふれば よわいはおいぬ しかわあれど はなを
 しみれば ものおもいもなし)

意味・・年月が経(た)ったので、私は年老いてしまった。
    そうではあるが、こうして美しい花を見ている
    と、何の物思いもないことだ。

    私は長い年月を経たのでもう老人になってしま
    ったが、満開の花のようなわが娘さえ見ていれ
    ば、悩みもなく満足である。

    娘の栄達を祝う言外に、よくぞ自分はここまで
    育てて来たものだという、ほっとした気持ちが
    表されています。

 注・・よはひ=年齢。
    しかはあれど=そうではあるが。
    花=立派になった自分の娘を花にたとえて
      いる。
     花をし=「し」は前の語を強調する語。

作者・・藤原良房=ふじわらのよしふさ。804~860。
    太政大臣・従一位。

出典・・古今和歌集・52。

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          位により着る布の色が違っていた

思ひきや 君が衣を ぬぎかへて 濃き紫の
色を着むとは
                藤原師輔

(おもいきや きみがころもを ぬぎかえて こき
 むらさきの いろをきんとは)

意味・・あなたが今までの四位が着る衣を脱ぎ換えて
    三位になって濃い紫の衣を着ようなどとは思
    いもしませんでしたよ。

    庶明(もろあき)朝臣が中納言になった時に詠
    んだ歌です。中納言昇進には右大臣の師輔が
    大きな役割を果たしのであろうが、その援助
    を表面に出さず、「思ひきや」(予想もしなか
    った)と言ったものです。

 注・・思ひきや=思ったであろうか、全く思いもし
     なかった。
    濃き紫=三位の位の人が着る衣の色。
    庶明=源庶明。951年53歳で没。中納言従三
     位。

作者・・藤原師輔=ふじわらのもろすけ。960年60歳
    で没。右大臣。

出典・・後撰和歌集・1111。

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