名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年10月

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今はとて 宿離れぬとも 慣れ来つる 真木の柱は
我を忘るな
                  源氏物語

(いまはとて やどかれぬとも なれきつる まきの
 はしらは われをわするな)

意味・・今となってはもうこれでお別れです。私が家
    を出て行っても、平素なじんで来た真木の柱
    よ私を忘れないでいておくれ。

    父と母が別れる事になり、母の実家に移る時
    に、柱の割れ目に、紙に書いて挟んだ歌です。

 注・・今はとて=今となっては、もはや。
    真木の柱=「真木」は杉や檜の良材をいう。
     柱は乾きすぎて、ひびや割れ目が入る。

出典・・源氏物語・真木の柱の巻。

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                 広重・画

山里は 雪降り積りて 道もなし 今日来む人を
あはれとは見む        
                平兼盛

(やまざとは ゆきふりつもりて みちもなし きょう
 こんひとを あわれとはみん)

意味・・山里は雪が降り積もって道も絶えてしまった。
    もし今日、私の所に訪ねてくれる人があったら、
    その人の事をいとおしいと思うだろう。

    雪が激しく降ったので道も全くない。こんな時
    にでも、相談なりにやって来る人は我が心に通
    う人だ、という気持です。    

 注・・あはれ=いとしいさま、愛着を感じるさま、気
     の毒だ、悲しいさま。喜楽・悲哀などの感動
     を表す語。

作者・・平兼盛=たいらのかねもり。生年未詳~990。
    従五位下・駿河守。三十六歌仙の一人。

出典・・ 拾遺和歌集・251。

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降る雪は かつぞ消ぬらし あしひきの 山のたぎつ瀬
音まさるなり             
                                            詠み人知らず

(ふるゆきは かつぞけぬらし あしひきの やまの
 たぎつせ おとまさるなり)

意味・・雪は降っているが、それは片っ端から解けて
    いるに違いない。解けた水が流れ込み、山の
    急流の音がよけいに大きく聞えてくる。

 注・・あしひきの=山の枕詞。
    たぎつ瀬=滝つ瀬。激つ瀬。激流。

出典・・古今和歌集・319。

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          盆地の中に横たわる鏡山、左に古墳が見える

大君の 和魂あへや 豊国の 鏡の山を
宮と定むる
              手持女王

(おおきみの にきたまあえや とよくにの かがみの
 やまを みやとさだむる)

意味・・都から遠く離れたこの地が、我が君・河内王の
    御心に叶ったのであろうか。そんなことはない
    はずなのに、こんな寂しい豊国の鏡の山を永久
    のお宮にお定めになるとは。

    694年太宰帥(だざいのそち)の河内王(かわちの
    おおきみ)は筑紫で死去し、大宰府の遥か東方の
    鏡山に葬られた。その葬送の地で妻手持女王が
    詠んだ歌です。王の身でありながらなぜ都から
    遠く離れた地で葬られたのかと痛恨した歌です。

 注・・大君=河内王(かわちのおおきみ)。689年太宰帥
     であった。
    和魂(にきたま)=「荒魂」の対で、霊魂の温順な
     面。
    あへ=敢へ。こらえる。叶う、気に入る。
    豊国の鏡の山=福岡県田川郡香春町の鏡山。盆地
     に横たわる小山。

作者・・手持女王=たもちのおおきみ。伝未詳。

出典・・万葉集・417。

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山の端に あぢ群騒ぎ 行くなれど 我は寂しゑ
君にしあらねば
                 舒明天皇
              
(やまのはに あじむらさわぎ ゆくなれど われは
 さぶしえ きみにしあらねば)

意味・・山際をあじ鴨が群れ鳴いて、騒ぎ飛行くように、
    多くの人が通り過ぎて行くけれども、私は寂しゅ
    ございます。その人々はあなたではありません
    から。

    亡き人を恋慕った歌です。
    この歌の長歌です。
    広い国土には人がいっぱいに満ち満ちて、まるで
    あじ鴨の群れのように、乱れて行き来するけれど、
    どの人も私のお慕いるあの方ではないものだから、
    恋しさに、昼は昼とて暗くなるまで、夜は夜明け
    まであなたを思い続けて、眠れないままにとうとう
    一夜を明かしてしまった。長いこの夜なのに。

    作者ははっきりせず、女性が詠んだ歌といわれ
    ている。

 注・・あぢ=小型の鴨であじ鴨。
    ゑ=嘆きをこめた感動を表す助動詞。

作者・・舒明天皇=じょめいてんのう。34代天皇。

出典・・万葉集・486。

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