名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年09月


としどしの としはかたちに ゆづりやりて 心にとしは 
とらせずもがな
                    大屋裏住
               
(としどしの としはかたちに ゆずりやりて こころに
 としは とらせずもがな)

意味・・年毎に加える齢(よわい)は、外見の形の方にゆずり
    やって、心には年をとらせたくないものだ。

    肉体の老衰はまぬがれないものとしても、精神年齢
    はいつまでも若く、みずみずしくありたいと誰しも
    の願いを歌っています。
    「とし」と「と」の重複も快いひびきをだしている。

 注・・かたち=姿形。外貌。
    もがな=希望の助詞。

作者・・大屋裏住=おおやのうらすみ。1734~1810。日本
    橋の裏長屋に住み大屋をしていた。

出典・・万代狂歌集(小学館「日本古典文学全集・狂歌」)

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奥 山の 岩垣もみぢ 散りはてて 朽葉がうへに
雪ぞつもれる       
                 大江匡房

(おくやまの いわがきもみじ ちりはてて くちば
 がうえに ゆきぞつもれる)

意味・・奥深い山の岩垣の紅葉はすっかり散って、朽
    葉の上に雪が積っている。

    人知れず紅葉は散り、人知れず雪が降る様を
    詠み、自分も人知れずに努力している事を暗
    示している。

 注・・岩垣もみぢ=四方を囲むように、岩の壁をに
     這う葛の類の紅葉、また岸壁に根を下ろし
     た木の紅葉。山里にこもっている自分をた
     とえている。

作者・・大江正房=おおえのまさふさ。1041~1111。
    正二位権中納言。

出典・・詞歌和歌集・156。

               祖谷のかつら橋

夕されば 衣手さむし みよしのの 吉野の山に
み雪降るらし           
                 詠み人しらず

(ゆうされば ころもてさむし みよしのの よしのの
 やまに みゆきふるらし)

意味・・夕方になったので、袖の中まで寒さを感じる。
    吉野の山には雪が降っているに違いない。

    吉野は特に山が深いので、今夜の寒さでは多分
    雪になっているだろう、という事を詠んでいま
    す。

 注・・夕されば=夕方になったので。
    衣手=袖のこと。
    みよしのの=「吉野」 にかかる枕詞。音調を
     整えている。

出典・古今和歌集・317。


岩代の 結べる松に ふる雪は 春もとけずや 
あらんとすらむ
               中納言女王
           
(いわしろの むすべるまつに ふるゆきは はるも
 とけずや あらんとすらん)

意味・・岩代の結び松に降る雪は、その名の通り結ばれた
    まま、春になっても解けないのだろうか。

    有間皇子が次の歌を詠んだか、皇子は処刑された
    ので、結び松を再び見る事が出来ずに、結ばれた
    ままとなった。

    盤代の 浜松が枝を 引き結び 真幸くあらば 
    また還り見む    (意味は下記参照)
             
 注・・岩代=磐代。和歌山県日高郡南部町岩代。
    結べる松=枝を引き結ばれた松。旅路の無事を
     願うために行う。

作者・・中納言女王=ちゅうなごんのにょうおう。源式部。
    生没年未詳。後三条院乳母。

出典・・金葉和歌集・286。

参考歌です。

盤代の 浜松が枝を 引き結び 真幸くあらば 
また還り見む
               有間皇子
             
(いわしろの はままつがえを ひきむすび まさきく
 あらば またかえりみむ) 

意味・・盤代の浜松の枝を結んで「幸い」を祈って行く
    が、もし無事であった時には、再び帰ってこれ
    を見よう。

    有間皇子は反逆の罪で捕えられ、紀伊の地に
    連行され尋問のうえ処刑されたが、この道中で
    詠んだ歌です。
    松の枝を引き結ぶのは、旅路などの無事を祈る
    まじないです。

 注・・盤代=和歌山県日高郡岩代の海岸の地名。
    真幸(まさき)く=無事で(命が)あったなら。

出典・・万葉集・141。


野ざらしを心に風のしむ身かな

                      芭蕉
                 
(のざらしを こころにかぜの しむみかな)

意味・・旅の途中で野たれ死にして野ざらしの白骨になる
    ことも覚悟して、いざ旅立とうとすると、折から
    の秋風が冷たく心の中に深くしみ込み、何とも心
    細い我が身であることだ。  

    遠い旅立ちにあたって、野ざらしになってでも、
    やり抜こうという心構えを詠んでいます。

 注・・野ざらし=されこうべ、野にさらされた白骨。

作者・・芭蕉=1644~1694。

出典・・野ざらし紀行。

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