名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年08月

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阿波池田 吉野の川の 橋に立ち 仰ぐ箸蔵寺
順礼の鈴
                                     小川正子

(あわいけだ よしののかわの はしにたち あおぐ
 はしくらじ じゅんれいのすず)

意味・・はるばる来て,阿波池田を流れる吉野川の橋
    から遠く箸蔵寺を仰いで見ていると巡礼者
    が鳴らす鈴の音が聞こえる。ああ、この巡
    礼者の中に癩患者が混じっていないだろう
    か。

    昭和9年、癩病患者救援のため、患者を探し
    面談して療養施設に入れるため土佐に行く
    旅で詠んだ歌です。当時、癩病を患うと世  
    間の目を気にして、患者を外部と接触させ
    ないように納屋などに隠し住まわせていた。
    癩を患った人も、家族の苦労を思いやり、
    巡礼者となって放浪の旅を続け行倒れにな
    っていた。

 注・・吉野の川=高知県および徳島県を流れる194
    kmに及ぶ川。日本三大大暴れの川といわれ
    ている。
    箸蔵寺=徳島県三好市池田町にある寺。江戸
    時代末期1861年再建され、国の重要文化財に
    指定されている。

作者・・小川正子=おがわまさこ。1902~1943。東
    京女子医学専門学校卒。長島愛生学園勤務。
    癩病患者救援に尽す。著書「小島の春」。

出典・・小川正子著「小島の春」。


落ちて行く 身と知りながら もみぢ葉の 人なつかしく
こがれこそすれ
              皇女和宮

(おちてゆく みとしりながら もみじばの ひとり
 なつかしく こがれこそすれ)

意味・・燃えるような彩りの紅葉は、しかし、よく見ると
    風に舞って落ちてゆく。その身の不運を知りなが
    らも、その不運を嘆くだけでなく、その一葉一葉
    にも生命があり、それを燃やし尽くしている。
    私は、政略結婚でこれから嫁いで行くのだが、不運
    を嘆くのでなく、相手の心に打ち解け、いちずに
    恋慕い尽してゆかねばと思う。

    徳川将軍家茂(いえもち)に16歳で嫁いで行く道中
    で詠んだ歌です。

 注・・なつかしく=心にひかれる。
    こがれ=焦がれ。いちずに恋したう。思い焦がれ
     る。

作者・・皇女和宮=こうじょかずのみや。1846~1877。
    31歳。政略結婚で14代徳川将軍家茂(いえもち)に
    嫁ぐ。
 
出典・・松崎哲久著「名歌で読む日本の歴史」。
 


大方の 秋の別れも 悲しきに 鳴く音な添えそ
野辺の松虫
               六条御息所
               
(おおかたの あきのわかれも かなしきに なくね
 なそえそ のべのまつむし)

意味・・一般的な秋との別れも悲しいのに、そのうえ
    私はあなたと別れねばならない。野辺の松虫
    よ、鳴き声を加えていっそう悲しませないで
    ほしい。

    光源氏が情が冷めて別れる時に六条御息所が
    詠んだ歌です。

 注・・大方=一般的に、だいたい。 

作者・・六条御息所=ろくじょうおんそくしょ。源氏
    物語・賢木の巻きに出て来る光源氏のかって
    の恋人。
 
出典・・風葉和歌集・1122。
 

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白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ
玉ぞ散りける
                文屋朝康 
        
(しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬき
 とめぬ たまぞちりける)

意味・・白露にしきりに風が吹いている秋の野は、ひも
    で貫き留めていない玉が散り乱れているようだ。

    薄の葉や萩の枝などに露をいっぱい集めた木
    草が秋風に揺さぶられ、露がその度ごとに白
    く輝きながら散っている情景です。

 注・・白露=草葉の上で露が白く光るのを強調した
     表現。
    吹きしく=「しく」は「頻く」で、しきりに
     ・・するの意。

作者・・文屋朝康=ぶんやのあさやす。生没年未詳。
     九世紀後半の人。

出典・・後撰和歌集・308、百人一首・37。


を折りて うち数ふれば この秋も すでに半ばを
過ぎにけらしも               
                  良寛

(てをおりて うちかぞうれば このあきも すでに
 なかばを すぎにけらしも)

意味・・(病気になって、人の家にお世話になっていたが)
     指を折って数えて見ると今年の秋も、もう半分
     過ぎてしまったようだ。(早く治って元気にな
     りたいものだ)

     病気になって人のお世話になっている時に詠ん
     だ歌です。
 
 注・・けらしも=「けり」と言い切ってよいところを婉
     曲(えんきょく)に表現したり、詠嘆的に軽く推
     量する意を表す。・・したのだったなあ。
 
作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。
 
出典・・谷川敏郎著「良寛全歌集」。

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