名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年08月


見る人も なくて散りぬる 奥山の 紅葉は夜の
錦なりけり
                 紀貫之
                
(みるひとも なくてちりぬる おくやまの もみじは
 よるの にしきなりけり)

意味・・はやす人もいないままに散ってしまう山深い
    紅葉は、まったく夜の錦である。

    この奥山の紅葉は誰にも見てもらえないで、
    自然に散ってしまうが、それは人にたとえ
    れば、都で立身出世したにもかかわらず、い
    っこうに故郷に帰って人々に知らせないよう
    なもので、はなはだ物足りない。

 注・・夜の錦=「史記」の「富貴にして故郷に帰ら
     ざるは錦を着て夜行くが如し」を紅葉を惜
     しむ意に転じる。
     (いくら立身出世しても、故郷に帰って人々
     に知ってもらわなければ、人の目に見えな
     い夜の闇の中を錦を着て歩くようなもので
     つまらない)

作者・・紀貫之=きのつらゆき。866~945。土佐守・
    従五位。「古今集」の中心的撰者。「土佐日
    記」の作者。
 
出典・・古今和歌集・297。
 

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秋の夜の ほがらほがらと 天のはら てる月かげに
雁なきわたる 
                  賀茂真淵
 
(あきのよの ほがらほがらと あまのはら てるつき
 かげに かりなきわたる)

意味・・秋の夜が明るく晴れて天空を月の光が満たす
    なか、雁が鳴きながら飛んで行く。

    晴れ渡った空に、月光が隈なく照っており、
    雁の声と羽ばたく姿に感動しています。

 注・・ほがらほがら=朗ら朗ら。はっきりしている
     さま。
    天のはら=天の原。大空、天の広大さをいう。
    月かげ=月の光。

作者・・賀茂真淵=かものまぶち。1697~1769。神
    官の家に生れる。本居宣長(もとおりのりなが
    )らの門人を育成。

出典・・賀茂翁家集。(河出書房新社「蕪村・一
茶・
    良寛」)
  


夕月夜 をぐらの山に 鳴く鹿の 声のうちにや 
秋は暮るらむ  
                紀貫之

(ゆうづきよ おぐらのやまに なくしかの こえの
 うちにや 秋はくるらん)

意味・・夕月夜を思わせるなんとなく暗い小倉山で鹿が
    寂しそうに鳴いている。あの声とともに秋は暮
    れて行くのだろうか。

    秋の終わりの寂しさを鹿の声で表わしています。

 注・・夕月夜=夕方西の空に見えるかすかな月の意味
     で、ここは小倉山の枕詞。
    小倉山=京都大堰川の北にあり嵐山と対をなす。
    声のうちにや=声のしているうちに。
 
作者・・紀貫之=きのつらゆき。868~945。従五位・
    土佐守。古今和歌集の撰者。古今集の仮名序を
    著す。
 
出典・・古今和歌集・312。
 

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天橋立


これはこれはとばかりに花の吉野山    貞室

股のぞき女もしてる秋の海        内田康夫

(これはこれは とばかりに はなのよしのやま)
(またのぞき おんなもしてる あきのうみ)

意味(貞室)・・春の吉野山は今が盛りの桜で覆われている。
      そのみごとな景色を前にすると、ただこれはこれ
      はと感嘆するばかりで、あとに言葉も続かない
      ほどだ。

意味(康夫)・・秋の青空の下、遠くまで見渡され、天の橋立の
      景色が美しい。股覗きした人が「これはこれは」と
      感嘆しているのを聞いて、恥も外聞も気にせず、女
      性も股覗きを楽しんでいる。

      天の橋立で詠んだ句です。
 
作者・・貞室=ていしつ。安原貞室。1610~1673。紙商を営
    む。松永貞徳に師事。
 
作者・・内田康夫=1934~2018。推理作家。
 

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天飛ぶや 雁の翼の 覆ひ羽の いづく洩りてか
霜の降りけむ
               詠み人知らず

(あまとぶや かりのつばさの おおいばの いずく
 もりてか しものふりけむ)

意味・・大空を飛ぶ雁が羽根を連ねて空を覆うあの翼
    の、どのあたりから洩れて霜が降ったのであ
    ろうか。

    まだ霜が降る時季ではないと思っていたのに
    霜が降っている。空を見上げると雁の群れが
    空を覆うように飛んでいる。雁の羽で空を覆
    おって霜が降らないようにしているはずなの
    に。

    霜の降った驚きと大群の雁の飛ぶ姿に感動し
    て詠まれています。

 注・・天飛ぶや=「雁」の枕詞。
    覆ひ羽=空を覆うように広げた羽。

出典・・万葉集・2238。
 

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