名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年06月

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山ざくら 峯にも尾にも 植えをかむ みぬ世の春を
人や忍と
                       西園寺公経

(やまざくら みねにもおにも うえおかん みぬよの
 はるを ひとやしのぶと)

意味・・山桜の若木を、山の頂にも尾根にも植えておこう。
    私は見ることが出来ないが、満開に咲き誇る春を、
    後の世の人々が賞美するだろうと。

         この別宅の庭には峯になったところも低地になった
    ところもあるが、そのどこにもみんな山桜を植えてお
    こう。そううすれば、ずっと後世の人も、私が全盛期
    にどれほど素晴らしい景色を眺めていたか、想像し
    てくれるだろうから。

    公経の絶頂期に西園寺にて詠んだ歌です。自分の
    権威を誇示するかのように、京の北山に広大な別
    宅を構えた。田園だった地域を大々的に造成して、
    山林や池を作って奥深い感じを出したという。この
    別宅は後に足利三代将軍義満が手に入れ、現在
    の金閣寺を造営した。

 注・・見ぬ世の春=私は見ることのない春。
    西園寺公経が京都北山に建てた寺。後に足利
    義満が金閣寺を建てる。

作者・・西園寺公経=さいおんじきんつね。1171~1244。
    従一位太政大臣。金閣寺の前身である西園寺を
    健立。

出典・・後藤安彦著「短歌で見る日本史群像」。


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みじかびの きゃぷりきとれば すぎちょびれ すぎかきすらの
はっぱふみふみ
                                    大橋巨泉

意味・・短めの万年筆のキャップを取れば、すぐに筆に
    なり、すぐにでもすらすら書ける、手紙も文も。

    1969年に万年筆のCMになった歌です。当時、
    「はっぱふみふみ」は流行語となった。

 注・・みじかびの=短い。
    きゃぷりき=キャップ。
    すぎちょびれ=直ぐにちょび筆。すぐに書ける
     筆。
    すぎかきすらの=すらすら書ける。
    はっぱふみふみ=手紙、文。

作者・・大橋巨泉=おおはしきょせん。1934~2016。
     早稲田大学中退。タレント。司会者。

出典・・岡井隆著「現代百人一首」。


契りおく 花とならびの 岡の辺に あはれ幾世の
春を過ごさん
                            兼好法師

(ちぎりおく はなとならびの おかのべに あわれ
 いくよの はるをすごさん)

意味・・自分が死んだなら一緒に過ごそうと、約束し
    て桜の木を植え、それと並んで墓地を作った
    が、この慣れ親しんだ双ヶ岡(ならびがおか)
    に、ああ、これから自分は桜の花とともにど
    れほどの年月(春)を過ごすのであろう。

    隠棲して双ヶ岡に墓所を作り、その傍らに桜
    の木を植えた時の歌です。

 注・・契り=約束。死んだら一緒に過ごそうと約束  
     して。 
    ならび=「並び」と「双ヶ岡」の掛詞。
    ならびの岡=京都市右京区御室仁和寺の南に
     ある岡。
    あはれ=感動詞。ああ。
    幾世=どれほどの年月。

作者・・兼好法師=1283年頃の生まれ。後に二条院に
    仕え、蔵人左兵衛佐(くらうどさひょうのすけ)
    になっていたが出家。「徒然草」で有名。

出典・・岩波文庫「兼好法師歌集・19」。 

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恋しけば 来ませ我が背子 垣つ柳 末摘み枯らし
我れ立ち待たむ
                 詠み人知らず

(こいしけば きませわがせこ かきつやぎ うれつみ
 からし われたちまたん)

意味・・そんなに恋しいのなら来て下さい、あなた。垣根
    の柳の枝先を枯らしてしまうほどに摘み取り摘み
    取りしながら、私はずっと門口に立ってお待ちし
    します。

    男の方からあなたが恋しい、お逢いしたくてたま  
    ません、といって来た返歌です。切実に待つ女心
    を詠んでいます。

出典・・万葉集・3455。


かりに来と 恨みし人の 絶えにしを 草葉につけて
しのぶころかな
                  曽禰好忠

(かりにくと うらみしひとの たえにしを くさばに
 つけて しのぶころかな)

意味・・その時だけのいい加減な気持ちで訪ねて来る
    人だと恨んだものだが、草葉が茂り刈る時期
    になっても、今では全く来なくなって見ると、
    懐かしく思い出されることだ。

    借金や義理だけで訪ねて来ていた人でも、全
    く来くなって見ると懐かしく思われて来る
    ものだ。

 注・・かりに=「仮に・かりそめに」と「刈り」を
     掛ける。
    絶えにしを=全く来なくなった。
    草葉につけて=草葉の茂るにつけて。「茂る」
     を補って解釈する。

作者・・曽禰好忠=そねのよしただ。生没年未詳。平
    安時代の三六歌仙の一人。

出典・・新古今和歌集・187。

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