名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年06月


つはものの 手に手に折りて 敷き寝せる 青葉の上に
月照りわたる
                                    森鴎外

(つわものの てにてにおりて しきねせる あおばの
 うえに つきてりわたる)

意味・・兵たちが、手に手に木の小枝を折って、それを
    敷いて寝ている。その青葉の上に月が冴(さ)え
    て照っている。

    鴎外は日露戦争に、軍医として出征している。
    陣中、地べたに青葉のまま小枝を敷いて睡眠を
    とるのである。このゴロ寝する、荒涼とした戦
    場の哀れさを詠んでいます。

作者・・森鴎外=もりおうがい。1862~1922。東大医
    学部卒。医者・小説家。

出典・・詩歌集「歌日記」(武川忠一篇「現代短歌鑑賞
    辞典」)

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夕顔の 棚つくらんと 思へども 秋まちがてぬ
我いのちかも
                                             正岡子規

(ゆうがおの たなつくらんと おもえども あきまち
 がてぬ わがいのちかも)

意味・・夕顔の棚を作ろうと思うけれども、その夕顔の
    実がなる秋を待つことも難しい自分の命だろう。

    夕顔は、広く大きな葉をつけて棚に這わせれば
    日よけにもなる。花は白く、実は大きく垂れて 、
    干瓢を作る。例年夕顔の棚を作ったのであろう。
    今年もその季節になったのである。そこで棚を
    作ろうと思うのだが、我が命は、秋まではどう
    かというのである。
  
 注・・夕顔=うり科ひょうたん属。夏の夕方に白い花
     が咲く。実の果肉を干したものが干瓢。
    秋まちがてぬ=夕顔の実のなる時としていった
     もの。待ちがたい、待つことが出来ない。

作者・・正岡子規=まさおかしき。1876~1902。35歳。
    東大国文科中退。

出典・・歌集「竹の里歌」。

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流れつつ 藁も芥も 永遠に 向かふがごとく
水の面にあり
                                   宮柊二

(ながれつつ わらもあくたも えいえんに むかうが
 ごとく みずのもにあり)

意味・・川岸から川下を見ていると藁や芥が浮いて流れ
    ている。あたかも永遠に続くように水に浮かん
    で流れている。

    昭和25年に詠んだ歌です。塵芥が流れている川
    の景色はとても美しい風景だといえない。藁や
    芥は自分の気持ち、すなわち憂いを暗示してい
    る。昭和25年当時は、長い戦争は終わったもの
    の、まだ食料不足の時代であった。まだまだこ
    の状態が永遠に続きそうだと感じて詠んでいま
    す。でも現実は川の水が流れているので藁も芥
    もいつかは無くなり、また時も流れて何もかも
    浄化して、美しい風景になることでしょう。

作者・・宮柊二=みやしゆうじ。1912~1986。長岡中
    学校卒。北原白秋に師事。日本芸術院賞を受賞。

出典・・岡井隆著「現代百人一首」。


禊する 今日は川瀬の 白波も 大幣にこそ
立ち渡りけれ
               中務卿のみこの娘

(みそぎする きょうはかわせの しらなみも おお
 ぬさにこそ たちわたりけれ)

詞書・・六月のつごもりに、祓(はらえ)しに川原に出て
    侍りて。

意味・・けがれた身を水で洗い清める今日は、川の川瀬
    の波も、大串につけられた幣として立ち続いて
    いるように見える。

    波の白さを幣に見立てている。

 注・・祓え(はらえ)=半年間の罪・汚(けが)れなどを
     神に祈って除き払うこと。夏越しの祓えともい
     う。
    禊(みそぎ)=身のつみ・けがれをはらうため、水
     で清めること。
    幣(ぬさ)=神へ供え物。木綿・麻・紙などで作る。
    つごもり=陰暦で月の末。みそか。

作者・・中務のみこの娘=物語の登場人物。

出典・・風葉和歌集・208(物語歌撰集です)

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まっさきに 気がついている 君からの 手紙 いちばん
最後にあける
                                俵万智

(まっさきに きがついている きみからの てがみ
 いちばん さいごにあける)

意味・・家のポストに届けられていた幾通かの郵便物の
    中に、あなたからの手紙をまっ先に見つけ出し
    ていながら、じれったさを楽しむかのように、
    私はその手紙を開封するのをわざと後回しにし
    て、いちばん最後に開封したことだ。

       嬉しさや期待、ときめきや急(せ)く気持ちとと
    もに、逆に楽しみは後に取っておきたいような
    気持ちやじれったさを楽しむような気持ちが混
    在している様子がよく伝わってくる。

作者・・俵万智=たわらまち。1962~。早稲田大学卒。
    佐々木幸綱に師事。歌集「サラダ記念日」が有名。

出典・・インターネット「俵万智のチョコレートBOX」。


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