名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年04月


下手ぞとて 我とゆるすな 稽古だに つもらばちりも
やまとことの葉
                  島津忠良

(へたぞとて われとゆるすな けいこだに つもらば
 ちりも やまとことのは)

意味・・いくら下手でも稽古をおろそかにするものでは
    ない。毎日少しずつ稽古を積み重ねれば必ず上
    達する。「塵も積もれば山となる」の譬えどお
    りである。

作者・・島津忠良=しまづただよし。1492~1568。薩摩
    の戦国武将。

出典・・高城書房篇「島津日新公いろは歌」。

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                            老いてなお円熟さが増す和紙を漉(す)く匠

老いてなほ 艶とよぶべき ものありや 花は始めも
終りもよろし 
                   斉藤史

(おいてなお つやとよぶべき ものありや はなは
 はじめも おわりもよろし。

意味・・年老いた身にも艶やかさはあるのでしょうか。
    もちろん艶やかさはありますとも。桜の花だ
    って満開の時だけが素晴らしいのではありま
    せん。蕾の時もよいし、何と言っても散り際
    が一番美しいではありませんか。

    80歳を過ぎた時の歌で、自分の気概を詠んで
    います。

作者・・斉藤史=さいとうふみ。1909~2002。福岡
    県立小倉女学校卒。前川佐美雄らと「短歌作
    品」を発刊。

出典・・歌集「秋天瑠璃」(栗本京子著「短歌を楽しむ」)


ふかみどり はやまの色を 押すまでに 藤のむらごは
咲きみちにけり           
                                 恵慶

(ふかみどり はやまのいろを おすまでに ふじの
 むらごは さきみちにけり)

意味・・ここは深い緑の木がおおう里山。藤の花が咲き
    充ちた今は、花の紫の濃淡が全山の緑を押し負
    かすほどになっているではないか。

    藤は蔓性の植物。木々の梢から梢へ、枝から枝
    へ、蔓が這い伝う。山の斜面が紫の花房に縫い
    綴られた状態を詠んでいます。

 注・・はやま=端山。山の麓のあたりや人里に近い低
     山をいう。「葉山」を掛ける。
    藤のむらご=「斑濃・むらご」は同じ色で濃淡
     がまだらになっているもの。藤の花びらは色
     の濃い紫のところと薄い紫のところがある。

作者・・恵慶=えぎょう。生没年未詳。960年頃活躍し
     た平安時代の僧。

出典・・松本章男著「花鳥風月百人一首」。


塵泥の 数にもあらぬ 我ゆえに 思ひわぶらむ
妹がかなしさ
                中臣宅守

(ちりひじの かずにもあらぬ われゆえに おもい
 わぶらん いもがかなしさ)

意味・・塵や泥のようにつまらない、物の数にも入ら
    ない私のために、辛い思いをしているあなた
    が愛しいことだ。

    越前の国(福井県)に流罪される途中で詠んだ
    歌です。自分が上手く立ち回らないばかりに
    罪を被って流罪になってしまった。自分の為
    にこのような辛い思いをさせるのがすまない
    と若妻に詠んだ歌です。

 注・・思いわぶらむ=気力を失い打ち沈んでいるだ
     ろうの意。
    かなしさ=愛しさ。いとおしい。

作者・・中臣宅守=なかとみのやかもり。生没年未詳。
    740年越前の国に流罪された(罪状不明)。

出典・・万葉集・3727。
  


もて遊ぶ 道を重んじ 嗜みの あらば冥加も
有らむ世の中
                                            荒木田守武

(もてあそぶ みちをおもんじ たしなみの あらば
 みょうがも あらんよのなか)

意味・・自分の楽しみとする芸道を重んじ、それに心得が
    あるならば、自然とそれに対する褒美もどこから
    か来るであろう。世の中は。
      
     この歌に添えられた作者の解説文です。
    文武の諸道だけでなく、何においても自分の携わ
    る技術に努力する人は、必ず天の恵みに預かり、
    自然と褒美がもらえるであろう。『論語』にも、
   「(食うことを目的としないで学問をしていても)
    禄がおのずからそれに伴って来る事もある」。と
    ある。天の恵みが訪れるのも、他でもない、自分
    が努力して得たそれぞれの分野での心得のおかげ
    であるという(のが、この歌の)意味である。

 注・・もてあそぶ心の慰みとして愛する。賞翫する。
       嗜み芸事などに関する心得。
       冥加気がつかないうちに授かっている神仏の加護・
        恵。思いがけない幸せ。

          神官

作者・・荒木田守武=あらきだもりたけ。1473~1549。伊勢神宮
出典・・世中百首絵鈔。

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