名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年02月

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     屛風ヶ浦・千葉県銚子 高さ40m~50mの断崖が8km続いている

今日までに 私がついた 嘘なんて どうでもいいよと 
いうような海
                 俵万智

(きょうまでに わたしがついた うそなんて どうでも
 いいよと いうようなうみ)

意味・・生まれてから今日までに私がついてきた、さま
    ざまな嘘。大らかに、深く澄んで、ただそこに
    遥(はる)かに広がるばかりの海原は、そんな
    私と私の罪を、黙って許してくれている。大ら
    かさゆえの無関心のようで、それでいて、私の
    思いも受け入れてくれているかのような、優し
    く、安堵をもたらしてくれる海である。

作者・・俵万智=たわらまち。1962~ 。早稲田大学卒。
    佐々木幸綱と出会い作歌を始めた。

出典・・歌集「サラダ日記」。


かかるよに 影もかはらず 澄む月を 見る我が身さへ
うらめしきかな
                  西行

(かかるよに かげもかわらず すむつきを みる
 わがみさえ うらめしきかな)

詞書・・世の中は大変な事になって、崇徳院は御謀反
    の企てに敗れるというとんでもない事態にな
    り、御出家されて仁和寺にいらっしゃると、
    もれ承(うけたま)って、お見舞いに伺った。
    月の明るい夜であった。

意味・・痛ましくも崇徳院が御出家になるようなこん
    な世の中が恨ましいばかりか、常に変わる事
    のない光を放っている月が、そしてそれを見
    ている我が身までが恨ましく思われる。

    何もかも変わって何を信じていいか分からぬ
    このような世に、いつもと少しも変わらぬ己
    が影をひいて、明るく澄んでいる月を見てい
    る自分という人間は、一体何なのであろうか。

    この歌は崇徳院が御謀反の戦に敗れて何日も
    経っていないまだ物情騒然としていた時期の
    歌です。御謀反の戦いというのは、多年にわ
    たっての崇徳院の皇位継承に関する不満が父
    鳥羽法皇崩御を契機として爆発し、それに
    原氏内部の摂関争いが結びついて起こった
    乱で、世に言う保元の乱です。

 注・・かかるよ=皇位継承の保元の乱が始まった世
     の中であり、崇徳院が破れて出家し、また
     讃岐に流された世の中。
    うらめしき=口惜しく悲しい、残念だ。

作者・・西行=さいぎょう。11181190。俗名佐藤義
     清。下北面の武士として鳥羽院に仕える。
     114023歳で財力がありながら出家。出家
    京の東山・嵯峨のあたりを転々とする。
     
出典・・家集「山家集・1227」。


親は子を 育ててきたと 言うけれど 勝手に赤い 
畑のトマト
                  俵万智

(おやはこを そだててきたと ゆうけれど かってに
 あかい はたけのたトマト)

意味・・親としては愛情を精一杯注ぎ、期待をかけ、
    子育ての苦悶も乗り越えて育て上げてきた愛
    しい我が子であるが、そんな親の思いを越え
    て、子どもは子どもとしての思いを抱き、個
    性をもち、独立した人格をもつかけがえのな
    い自分として成長し、生きている。

 注・・勝手に赤い畑のトマト=畑のトマト
    は手取り足取り伸び方を教えなくて
    も、自力で伸びて赤くなる。

作者・・俵万智=たわらまち。1962~ 。早稲田大学
    卒。佐々木幸綱と出会い作歌を始めた。

出典・・歌集「サラダ記念日」。


らうらに 照れる春日に 雲雀あがり 心悲しも
ひとりし思へば
                   大伴家持

(うらうらに てれるはるひに ひばりあがり こころ
 かなしも ひとりしおもえば)

意味・・のどかに照る春の日差しの中を、ひばりが
   飛んでいく。そのさえずりを耳にしながら
   一人物思いにふけっていると、なんとなく
   物悲しくなっていくものだ。
   
   悩み事が無く、さわやかな春の日を楽した
   いものだなあ。

 注・・うらうらに=のどやかに。うららかに。

作者・・大伴家持=大伴家持。718~785。大伴
    旅の長男。越中(富山)守。万葉集の編
    纂を行った。

出典・・万葉集・4292。


妹の 小さき歩み いそがせて 千代紙買いに 
行く月夜かな
               木下利玄

(いもうとの ちいさきあゆみ いそがせて ちよがみ
 かいに ゆくつきよかな)

意味・・日はとっぷりと暮れている。千代紙を欲しがった
            幼い妹を、兄が連れて、夜道を二人で歩いている。
    ついつい兄は、妹がなかなか速く歩けないので、
    歩みを急かせてしまう。二人の兄妹を、ほのぼの
    と宵の月が照らしている。

 注・・千代紙=色や模様のついた紙。

作者・・木下利玄=きのしたりげん。1886~18861925。
    東大国文科卒。佐々木信綱と交流。

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