名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2018年01月

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さまざまの事おもひ出す桜かな
                     芭蕉

(さまざまの ことおもいたす さくらかな)

詞書・・旧主の別邸に招かれて。

意味・・昔、参上したことのあるこのお邸(やしき)に
    咲く桜、本当に何年ぶりでございましょう。
    さまざまなことを思い出します。本当にこの
    一本の木にどんな思いのこもっておりますこ
    とか。

    誰にも桜には沢山の思い出があることでしょ
    う。満開の桜の下に立ち、来し方を振り返る
    芭蕉です。
    私は毎年桜を仰ぐたびにこの句を口ずさみ、
    「さまざまな事」を思い出します。そして、
    来年は誰と一緒に桜を愛(め)でるのだろうと
    思い、今より少しは成長した自分で桜に臨み
    たいと、念じます。

作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1695。

出典・・笈の小文。

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春昼の指とどまれば琴も止む
                     野沢節子

(しゅんちゆうの ゆびとどまれば こともやむ)

意味・・のどかな春の昼下がりです。何か思うことでも
    あったのでしょうか。琴を奏(かな)でいた作者
    が、ふと指をとめました。すると琴の音も止ま
    ったというのです。

    当たり前のことと言えばそれまでですが、そこ
    に改めて発見があったのです。
    私たちの日常もそう。歩みを止めた途端に全て
    のことがとどまる・・。だから何があっても歩
    み続ける。次の一歩がその先の一歩を育んでい
    く。

 注・・とどまれば=たちどまれば、とどこおれば。

作者・・野沢節子=のざわせつこ。1920~1995。俳人。

出典・・黛まどか著あなたへの一句」。

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ひく波の 跡美しや 桜貝
                  松本たかし

(ひくなみの あとうつくしや さくらがい)

意味・・波が渚に遺(のこ)していったものは、ひと
    ひらの桜貝でした。波が去ってから次の新
    しい波が訪(おとな)うまでのほんの束の間、
    洗いあげられた砂浜に、桜貝は淡い紅を灯
    したことでしょう。そして一片の桜貝から
    一瞬の静けさと清らかさが広がっている。

    私は、何を遺していけるでしょうか・・。

 注・・遺す=あとに伝える、死後にとどめる。

作者・・松本たかし=まつもとたかし。1906~19
    56。高浜虚子に師事。

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今日何も彼もなにもかも春らしく
                   稲畑汀子

(きょう なにもかも なにもかも はるらしく)

意味・・春一番も吹き、日に日に春めいてきました。
    梢を渡る風の音、ひるがえる波の音、カフ
    ェのおしゃべりの声も・・今日すれ違うす
    べてのもの、五感に触れるすべてののが春
    らしく感じられて来る。

    「なにもかも」の繰り返しによって、浮き
    立つような心うちが引き出されています。
    きっと一番春めいているのは作者の心なん
    でしょう。

    目の前の風景に春を見い出すか見い出さな
    いかは、自分の心の向き次第なのです。

作者・・稲畑汀子=いなはたていこ。1931~ 。
    高浜虚子の孫。

出典・・黛まどか著「あなたへの一句」。

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春の鳶 寄りわかれては 高みつつ
                   飯田龍太

(はるのとび よりわかれては たかみつつ)

意味・・雌雄の鳶でしようか。相寄ったり別れたり
    しながら、春の長閑な空をほしいままに旋
    回している。少しずつ少しずつ高みながら。
    
    恋に限らず人の世には出会いと別れがつき
    ものです。何があっても常に「高みつつ」
    飛翔し続けること。この志こそが大切です。

作者・・飯田龍太=いいだりゅうた。1920~2007。
    国学院大学卒。飯田蛇笏は父。

出典・・黛まどか著「あなたへの一句」

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