名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2016年04月


山ごとに 寂しからじと 励むべし 煙こめたり
小野の山里
                 西行
              
(やまごとに さびしからじと はげむべし けむり
 こめたり おののやまざと)

意味・・一つ一つの山ごとに、庵でそれぞれに孤独に
    堪えて修行に励んでいる人がいるようだ。
    それぞれの立てている煙が一つとなって霞ん
    でいる、この冬の山里では。

    独りでおりながら、同好者のいることの安堵
    感を詠んでいます。

 注・・小野の山里=山城国(京都府)葛城郡小野。比
     叡山の西麓。隠棲の地として有名。

作者・・西行=さいぎょう。1118~1180。

出典・・歌集「山家集・566」。
 
感想・・「ひとりぽっち」という言葉がある。
    一人ぽっち、独法師とも書くそうです。
    「独法師」は西行の歌にあるように、孤独に
    耐えて修行する法師なのだろう。
        
     一人でいて寂しくても、それは修行。辛くて
    も人に頼らずに耐える、独法師。
 
    やっている事は正しいという信念のもとに、
    誰も理解してくれる人がいなくても、一人で
    も負けずに頑張って行きたいと思います

 注・・修行=我が身に執着せず、我欲を捨てる など
    の努力。
        


何をして 身のいたづらに 老いぬらん 年の思はむ
ことぞやさしき            
                   詠人知らず
                  
(なにをして みのいたずらに おいぬらん としの
 おもわん ことぞやさしき)

意味・・私はいったい何をして、このようにむなしく年
    老いてしまったのだろうか。一緒に過ごして来
    た年が、私のことを何と思っているであろうか
    と、年に対して恥ずかしいことである。
 
    とりたてて言えるような事は何もなく、むなし
    く年老いたと、過去を顧みた歌です。

 注・・いたづらに=無用の状態に、むだに。むなしく。
    やさしき=恥ずかしい。

出典・・古今和歌集・1063。
 
感想・・「身のいたづらに老いぬらん」は充実感のある
    生活をしなくて老いてしまった、何の実績も無
    く虚しく生きて来たということだろうか。
    要するに、充実した生活、虚しくない生き方を
    したいと、詠んだ歌だと思います。
 
    下積みの生活をしていて、その日の生活が精一
    杯の人が、食うために働く。力一杯働く。自分
    の時間も無い。この人は不幸せであろうか。
    虚しい生き方をしている人であろうか。
    私は幸せな人と思います。力一杯働いている以
    上、充実した生活をしている人だと思います。
 
    苦労せずとも標準以上の生活出来る人。この人
    は楽が出来て自分の時間も持てる人です。
    このような人は幸せな人だろうか。
    自分の時間を有効に使わなければ、充実感が少
    なく、時には虚しい思いになるのではなかろう
    か。こんな場合は不幸せだと思います。
 
    虚しい思いになるかどうかは、自分の持てる力
    を力一杯発揮出来たかどうかのような気がしま
    す。充実した生活も何かに打ち込んだ姿にある
    のではないだろうか。


しかりとて 背かれなくに 事しあれば まづ嘆かれぬ
あな憂世の中
                   小野篁

(しかりとて そむかれなくに ことしあれば まず
 なげかれぬ あなうよのなか)

意味・・いやな世の中だと言ったって、すぐさま逃げ
    出すわけにはいかないさ。何か事が起きれば
    最初に出るのはいつも嘆息。ああ、いやだ、
    この世の中は。
 
 注・・しかりとて=そうであるからといって。
    背かれなくに=世を背いて出家・遁世出来る
     ものではない。
    事しあれば=何か一大事があればいつでも。
     「し」は強調の助詞。
    あな憂世の中=この世の中、ああ辛いことよ。
     「あな」は感動詞。

作者・・小野篁=おののたかむら。802~853。従三位・
     左大弁。遣唐使に任ぜられたが拒否した為
     隠岐に流罪になる。漢詩人として有名。

出典・・古今集・936。
 
感想・・「あな憂世の中」について。
    あらゆる苦しみ、困難に直面して解決に苦労
    する事を四苦八苦という。
    これを「あな憂世の中」、なんと辛い世の中
    だろうと詠んだ歌です。

    四苦八苦は、生苦・老苦・病苦・死苦の事で
    あり、八苦は四苦に愛別離苦・怨憎会苦(おん
    ぞうえく)・求不得苦などを加えたものです。
    老・病・死は肉体的苦痛を伴う事が多いが、
    老・病・死を縁とする精神的苦悩が強く感ぜ
    られる事も多い。老・病・死による自分や家
    族の生活不安とか、地位・名誉・権力などの
    喪失を恐れるなどのために苦悩が生じる。

    愛する人々と生別・死別する事の苦痛。嫌い
    な憎い人々と出会い共に暮らす事は苦悩の種
    となる。求不得苦、思い通りにならない事か
    ら生ずる苦である。欲求が充たされない事か
    ら起こる苦悩。

    この様な諸々の苦悩が、「事しあれば」ああ、
    いやだ、この世の中はとため息が出る。
 
    これら多くの苦悩は誰にも経験する事です。
    苦悩に直面した時に、自分一人が苦しんでい
    ると思えば、苦痛は大きくなるものです。
    自分だけが苦労しているのではない、他の人
    も悩んでいる、と思えばいくらかでも苦しみ
    が和らぐのではないだろうか。


ながめつる 今日は昔に なりぬとも 軒端の梅は
われを忘るな
                  式子内親王
             
(ながめつる きょうはむかしに なりぬとも のきばの
 うめは われをわするな)

意味・・もの思いをしながら見入っていた今日という日は、
    私が亡くなって昔になってしまっても、軒端の梅
    の花だけは、私を忘れないでおくれ。

 注・・ながめつる=眺めつる。物思いに沈んでいること。
    今日=もの思いをしながら梅を見入っていた今日。
           昔になりぬとも=私が亡くなって、昔になってし
     まっても。
    軒端=軒に近い所。

作者・・式子内親王=しょくしないしんのう。~1201没。
    後白河上皇の第二皇女。歌集に「式子内親王集」。
 
出典・・新古今和歌集・52。
 
感想・・「軒端の梅は われを忘るな」、梅にどんな事を
    忘れないで欲しいと言っているのだろうか。
    梅を眺めている今の気持ち、この気持ちを梅よ
    忘れないでおくれ、と。
    気持ちには喜怒哀楽、嬉しい事、悲しい事、楽
    しい事、悔しい事、苦しい事、残念な事・・と、
    色々あります。

    「この気持ち」とは、病気などで気弱になってい
    る事なのか、失敗して悔し涙を流している気持
    なのだろうか。

      梅よ、今に元気な姿になってみせるぞ!
    梅よ、この失敗を反省し、必ず教訓にしてピン
    チをチャンスにするぞ!と梅に誓っているのだ
    ろか。
    この私の思いを、梅よ忘れないでおくれ、と。

      私(式子内親王)も庭の梅を見るたびに、この気
    持ちを思い出すのだ。
    願い事を紙に書き、梅の枝に結び付けているイ
    メージ の歌と受け取りました。


花の色は 移りけりな いたづらに わが身世にふる
ながめしまに
                 小野小町

(はなのいろは うつりけりな いたづらに わがみ
 よにふる ながめせしまに)

意味・・花の色も私の美しさも、もはや消え失せてしまっ
    たのだ。思えば、むなしくも我が身はすっかり老
    い衰えてた。驕慢(きょうまん)な物思いにふけり
    眺めているうちに、花が春の長雨にうたれて散っ
    ていくように。

    散る前に長雨のためにすでに色あせてしまった桜
    と、ぼんやりもの思いにふけっている間に盛りを
    過ぎてしまった我が身とが重ねられています。
     
 注・・花の色=表面は花であるが、裏面に作者の容色を
     暗示している。
            いたづらに=むなしく、つまらなく。
    ふる=降ると経る(年月が過ぎる)、古る(古るび
     れる)を掛けている。
    ながめ=長雨と眺めを掛けている。
    眺め=ぼんやりと物思いに沈む。
    驕慢=おごり高ぶって人を見下すこと。

作者・・小野小町=生没年未詳。850年頃に後宮に仕えた。
    美人伝説で有名。
 
出典・・古今和歌集・113、百人一首・9。

感想・・驕慢な物思いとはどんな態度でしょうか。
    建設的なことをするわけでもなく、ぼんやりと過
    ごし物思いに沈んでいることです。
 
    例えると。

    営業の仕事に携わっているとします。
    販売目標が決められています。
    好調でこの目標以上に販売が続いている時。
    「上の人は見てくれんなぁ、こんなに努力してい
    るのに」
    「それが当たり前なんて言いはる」。
    「給料もこのところ全然上がってないし、やる気
    がなくなるよなぁ」

    販売の不振が続くと。

    「売上げ目標が高すぎるよぉ、かってに決めてし
    もうて」
    「誰も見向きもしない物を売らせてぇ。売れる物
    を開発して欲しいよなあ」「ああ、また小言を聞
    かなきゃいけんか。給料半分は我慢賃と思うか」。

    小野小町の心
    「うん、今日はよく売れた、昨日と比べて何処が
    良かったのだろうか」「よし、明日もこの方法で
    いくとしょう」
    「売上げ目標を達成したがこれは不振の時の貯金
    としょう」
  
    「今日の売上げが芳しくなかったのはどうしてだ
    ろう、あのお客さんのほめ方が悪かったかなぁ」。
    「そういえば、忙しそうにしていたなぁ、相手の
    都合も知らなくちゃ」「よし明日の作戦をたてる
    ぞ」。

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