名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

2016年01月


今日も暮れ 明日も過ぎなば いかがせむ 時のまをだに
耐えぬ心に               
                    散逸物語・前関白

(きょうもくれ あすもすぎなば いかがせん ときのま
 をだに たえぬこころに)

意味・・今日も暮れ、明日も過ぎたら、私はどうしたら
    いいのだろう。ほんの少しの間でさえ、あなた
    に逢えないと耐えられない気持ちなのに。

 注・・時のま=時の間。少しの間、しばらくの間。
    散逸物語=散逸して今では無くなった物語。

作者・・前関白=物語の主人公。

出典・・岩波書店「王朝物語秀歌選」。
 
感想・・この歌の意味を次のように取りました。
    今日も暮れ、明日も過ぎたら、私はどうしたら
    いいのだろう、納期が迫ってあせるばかりだ。
 
    そして、昔の会社勤めをしていた時を思い出し
    ました。
    予定が遅々として進まない。あれもせにゃなら
    ない。これもせにゃならない。でも、会議や安
    全パトロールなどが入り自分の仕事をする時間
    がない。
    これに少し手をつけ、あれにも手をつける。
    時間が過ぎて行くのに、完成した物がない。
    納期がどんどん迫って来る、どうしよう。
 
    昔の忙しかった時代が懐かしく思い出されくる。
 
 


わが宿の 池の藤波 咲きにけり 山ほとどぎす
いつか来鳴かむ         
                詠人知らず

(わがやどの いけのふじなみ さきにけり やま
 ほとどぎす いつかきなかん)

意味・・我が家の庭先の池のほとりの藤の花が
    みごとに咲いた。山ほとどぎすはいつ
    ここに来て鳴いてくれるだろうか。
    早く来て鳴いてほしいものだ。

 注・・藤波=藤の長い花房が垂れて風に揺られ
     ている風情。

作者・・柿本人麻呂とも言われている。

出典・・古今和歌集・135。
 
感想・・この歌の景色を写真に撮るとすればどの
    ように映すだろうか。
    遠景を添え写して春の息吹を撮り冬の去
    った安心感を訴えるだろうか。
    藤波に池を添え写し恋人と一緒に散歩し
    たくなる思いを撮るだろうか。
    わが宿を入れて写し、家人が手入れして
    藤の花を美しく咲かせた喜びを訴えるだ
    ろうか。
    ごく近くで藤の花房だけを写して藤の美
    しさ、清々しさを訴えるでだろうか。
    小鳥がいたら、明るい気持ちが表現出来
    そうだ。小鳥が鳴く平和な社会、幸せな
    生活を感じさせる藤波の景色である。
    


焚くほどは風がもて来る落ち葉かな

                     良寛
                   
(たくほどは かぜがもてくる おちばかな)

意味・・私が庵で燃やして煮炊きするくらいは、風が
    吹くたびに運んでくれる落ち葉で、十分間に
    あうことだ。だから私にとって、この山の中
    での暮らしは、物に乏しくとも満ち足りてい
    るものだ。

    長岡藩主牧野忠精が寺を建て良寛を城下に招
    聘(しょうへい)しょうとして、良寛の庵まで
    来たが、この時に詠んだ句です。
    「吾れ唯足るを知る」それとも、「成るよう
    に成る」ですか。

作者・・良寛=1758~1831。
 
出典・・谷川敏郎著「良寛全句集」。
 
感想・・「あっ、あの人すごい」と言われたら気分が
    いいものです。でもそのように言われるまで
    が大変。
    「あの人はすごい」と言われには、努力しな
    いでぼさっとしていては言われない。
    高い理想を持ち、どんな困難があってもやり
    抜くという強い信念が必要だ。
    こんなタイプの人を「将来を夢見る人」とし
    ょう。
    一方、「吾唯足るを知る」タイプの人。
    欲を控えて、今の状態で満足出来る人です。
    「あの人はすごい」というものは持たないが、
    今を満足している。人の評価も気にせず、現
    状に楽しみを見出そうという人。
 
    どちらのタイプの人がいいのだろうか。


日々日々に時雨の降れば人老いぬ
                     良寛 
 
(ひびひびに しぐれふれば ひとおいぬ)
 
意味・・このところ、毎日毎日冷たい時雨が降っては
    通り過ぎてゆくので、気持ちまで晴れること 
    がない。そため、急に年をとってしまったよ
    うに、衰えたことだ。
 
          こんな事ではだめなんだぞ、という歌です。
            昔から、成功した人で、しょんぼりして背中
    をすぼめて歩いている人はいない。どんなに
    苦しい時でも、どんなに辛い時でも、元気い
    っぱい胸を張って歩いている。ちょっと物事
    がうまくいかなかったり、失敗したからとい
    って落ち込んだり、くよくよ考えたりしてい
    てはいけない。いつでも胸を張っていなけれ
    いい仕事は出来ない、と。
 
 注・・人老いぬ=雨にぬれまいとして、前かがみに
     なった人物の表現。年をとる、衰えるの意
     味も兼ねている。
 
作者・・良寛=1758~1831。
 
出典・・谷川敏朗著「良寛全句集」。
 
感想・・失敗したら多くの人が落ち込み、くよくよする
    ものです。くよくよせず元気に胸を張れたら言
    ことはないが。
    失敗した時、失敗は誰でもする。自分の失敗は
    小さい小さいと思えば気も楽になるかも知れな
    い。
    超優良企業であったシャープが社長の失敗で倒
    産の瀬戸際に立たされている。
    液晶事業の将来を見誤って過大な設備投資をし
    た失敗です。
    この失敗に比べたら、少々の失敗は小さなもの
    です。
    失敗は誰でもするものです。失敗したからと言
    って背中を丸めて、しょぼしょぼ歩くような事
    はしたくないものです。
    その為には、失敗から何かを学び取ろうという
    姿勢が大事です。
    失敗の原因を調べる。失敗した同じ状況になら
    ないように考える。
    そして以前より進歩したと自覚出来れば、元気
    が出て胸が張れるものです。


三椀の 雑煮かゆるや 長者ぶり        蕪村

(さんわんの ぞうにかゆるや ちょうじゃぶり)

意味・・貧しい暮らしでも、一家揃って雑煮を食べて
    新年を祝うのはおめでたい。
    雑煮を三椀もおかわりするとは、長者らしい
    大らかな気持になるものだ。

 注・・かゆる=食ゆる。飲食する。
            長者=金持ち。福徳者。


感想・・「富」について徒然草の123段に書かれています。
 
      無益な事をして時を過ごす人を、愚かな人とも、間違った
    事をする人とも言ってもいい。社会のため否応なしにしな
    ければならない事は多い。それをした後の余暇など、どれ
    ほどもない。よく考えてみるがよい。人間の身として、や
    むにやまれずあくせくするのは、第一に食う物、第二に着
    る物、第三に住む所である。人間にとって大事な物はこの 
    衣食住の三つに過ぎない。飢えることなく、寒くもなく、
    風雨に侵されないで、心静かに日々を過ごす事を人の楽し
    みと言うのである。ただし、人は誰でもみな病気になる。
    病気にかかってしまうと、その苦悩は耐えがたい。だから
    医療を忘れてはならない。衣食住に薬を加えた四つの物が
    手に入らない状態を貧しいという。この四つに不足ない状
    態を富んでいるという。この四つ以外の物を求めてあくせ
    くするのを贅沢という。この四つの物を求めて倹約するな
    らば、誰も不足を感じる事はないはずだ。

      これは、車も電気もテレビもない時代で1000年昔の考え方
    です。でも、社会のために身を惜しまず働き、三椀の雑煮
    が食べられて幸せだと考えていた人もいたということです。

      幸せとは何かと考えさせられます。

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