名歌鑑賞のブログ

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

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                八重葎


八重葎 しげる宿の さびしきに 人こそ見えね 
秋は来にけり   
                恵慶法師 
             
(やえむぐら しげるやどの さびしきに ひとこそみえね
 あきはきにけり)

意味・・幾重にも葎(むぐら)の生い茂る寂しいこの家に、
    人は誰も訪れて来ないが、秋だけはいつもと変わ
    らずにやって来た。

    詞書に「河原院にて、荒れた宿に秋の心を詠む」
    とあります。
    河原院は、源融(とおる)左大臣が建てた雅(みやび)
    やかで豪華な邸宅であったが、融の没後は荒れ果て
    てしまった。
    華やかな過去を思い出しながら、時の推移と共に現
    在の荒廃した姿の哀れさを詠んでいます。

 注・・八重葎=幾重にも茂った葎。「葎」はつる性の雑草
     の総称。「八重葎」は邸宅の荒廃ぶりを描写する
     場合に象徴的に用いられる表現。

作者・・恵慶法師=えぎょうほうし。生没年未詳。10世紀後
    半の人。

出典・・拾遺和歌集・140、百人一首・47。

2717 (2)


むっとして もどれば庭の 柳かな 
                    大島寥太

(むっとして もどればにわの やなぎかな)

意味・・なにか腹の立つことがあり、むっとした気持で
    外から戻ってくると、庭の柳が風のままに揺れ
    ていた。それを見て教わる気がした。

    風に逆らわない柳を見て、人に逆らわず何事も
    「風に柳」と上手に受け流すべきだと反省した
    句です。

作者・・大島寥太=おおしまりょうた。1718~1787。
    芭蕉の功績を広める事業に努めた。

1317


若の浦に 潮満ち来れば 潟を無み 芦辺をさして
鶴鳴き渡る       
                 山部赤人
 
(わかのうらに しおみちくれば かたをなみ あしべを
 さして たずなきわたる)

意味・・和歌の浦に潮が満ちて来ると干潟が無くなる
    ので、芦の生えている岸の方へ向かって鶴が
    鳴きながら飛んで行くよ。

 注・・若の浦=和歌山市和歌浦の玉津島神社付近。
    潟を無み=干潟が無いので。

作者・・山部赤人=やまべのあかひと。生没年未詳。
    724頃活躍した宮廷歌人。

出典・・万葉集・919。


心には 下ゆく水の わきかへり 言はで思ふぞ 
言ふにまされる
                詠人知らず
 
(こころには したゆくみずの わきかえり いわで
 おもうぞ いうにまされる)
 
意味・・私の心の中には、表面からは見えない地下水が
    わき返っているように、口に出さないけれど、
    あなたのことを思っています。その思いは口に
    出して言うよりずっと思いは深いのですよ。
 
出典・・古今六帖。

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種まきし わがなでしこの 花ざかり いく朝露の
をきてみつらん      
                       藤原顕季

(たねまきし わがなでしこの はなざかり いくあさ
 つゆの おきてみつらん)

意味・・私が種をまいた撫子の花は今花盛りだ。
    朝露の置いた花をもう幾朝起きては見
    た事だろう。

    藤原長実(ながさね)大臣の家の歌合で
    詠んだ歌です。顕季(あけきえ)は長実
    の父親。わが子の「花盛り」を讃えて
    いる。

 注・・わがなでしこ=「我が撫でし児」を掛
     ける。
    をきて=「置き」に「起き」を掛ける。
 
作者・・藤原顕季=ふじわらあきすえ。1055~
    1123。詞花和歌集の撰者顕輔の父。諸
    国の守を歴任。
 
出典・・詞花和歌集・72。 

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